「裸足になって」感想文

予告を見ただけで感動して泣きそうになりました。年齢なのか何なのか…。

ただ、この時想像したような「女性たちのダンスに賭ける話」とは少し違っていました。

アルジェリア内戦という社会情勢が色濃く反映されていて、かなり重苦しさがあります。

主人公フーリアを演じたリナ・クードリの力強い表情、ダンスに魅了されました。

あらすじ

内戦の影が残るアルジェリアが舞台。不安定な治安の中で、フーリアはバレエダンサーを夢見て練習に励んでいた。

ある夜、賭博場からの帰りに男から襲われ転落、足を大けがし、声が出なくなる。絶望するフーリアだったが、リハビリ施設で手話を通じて女性たちと交流を持つようになる。

「ダンスを教えてほしい」その声に応え、希望を見い出したが、その後にも数々の困難にみまわれ…。

良かったところ

バレエと声の他にもさまざまなものをフーリアは奪われます。不条理な目に合いながらも、自己表現を諦めずに戦う姿、仲間との団結と絆が心に響きました。

様式美であるバレエ、足を傷つけながらのトウシューズから、文字通り「裸足になって」豊かで自由なダンスに変化したところも、示唆的で素晴らしいです。

原題は主人公の名前と自由を意味する「HOURIA」ですが、「裸足になって」はいい邦題だと思いました。

最後のダンスシーンでは、フーリアと仲間たちが、抑圧に屈しない強い意志を表現していて、感動的でした。

すこし残念だったところ

99分の映画の中でダンスを見せるシーンもかなりあり、物語が少し早足だったかもしれません。

父親を失った経緯を母親が語るところ、親友の亡命したい気持ち、犯人への思い、いつも道にたむろしている男たちの素性と交流など、もう少し詳しく知りたい気もしました。

あと、女性たちそれぞれの背景がもっと描かれると共感が深まったと思います。誰がどのバックグラウンドを持っているかが、一部、把握しきれないままになりました。

フーリアに襲いかかる運命が過酷すぎる印象もあり、立ち直るのも時間的に早い気がしました。親友の不運などはカットしても良かったのでは…というのは勝手な意見です。

それだけ興味深い設定だったとも言えますが、気持ちが追いつかない部分があったので、もう少し丁寧に、時間をかけて描いても良かったかもしれません。

まとめ

とはいえ、多くの意味はダンスの中に表現されていて、そこに何にかを「感じる」映画なのでしょう。

後から思ったことですが、美しい…と思うばかりではなく、もっとダンスで表現している意味を見い出しながら鑑賞すればよかったです。

バレエの道を閉ざされたことにより、フーリアは不自由になったのかというとそうではなく、自由と強さ、温かい交流を持つ人生の美しさを手に入れたのだと解釈しました。

予告映像ほど明るく爽やかな映画ではありません。社会情勢という重い影がつきまとい、フーリアの苦しみも大変なものですが、なぜか私自身も彼女たちの一部になったかのような感覚がありました。

女性に対する応援のような意味合いを含んでいて、そこに共感するものがあったのかなと思います。

好みは分かれるかもしれませんが、いい作品でした。