『苦い涙』がとても面白かったので、フランソワ・オゾン監督の最新作を楽しみにしていました。
今回はクライムミステリーということですが、クライムコメディと言った方が合っている気がします。
有名映画プロデューサー殺人事件をめぐって、「自ら濡れ衣をかぶり、スターへと駆け上がる女優マドレーヌ」「筋書きを考えるルームメイトの新人弁護士ポーリーヌ」「それを見て真犯人は自分だと名乗りを上げる往年の女優オデット」が繰り広げる喜劇です。
マドレーヌ、ポーリーヌ vs オデットですね。
ここに恋人や判事や記者や恋人の父など、さまざまな男性が関わり、若さと美貌と賢さを備えたマドレーヌたちに翻弄されていきます。
真犯人の座を奪い合うという、常識を覆す発想と、怒涛の会話劇で、ずっと笑いながら観ていました。
登場人物は全員、大なり小なりズレていて、これをどうまとめるのか興味深かったのですが、ラストにかけて鮮やかに収束し、大団円となったのが見事でした。
主人公のマドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)とポーリーヌ(レベッカ・マルデール)はもちろん可愛いのですが、私は、往年の女優オデットを演じた、イザベル・ユペールが最高にツボでした。
↓ここからネタバレありです↓
犯人に成り代わったマドレーヌが正当防衛で無実となり、スターになっていく姿を見るやいなや「自分が犯人」だと堂々と出てくる厚かましさ。
殺人者のくせに、黙っているから金をよこせと言う厚かましさ。
24歳のマドレーヌの母親役でも歳取りすぎなのに(70歳ぐらい)、姉役を要求する厚かましさ。
しかもポーリーヌに手を出したっぽい(ポーリーヌはおそらく同性愛者で、マドレーヌが好きだったようです)。
こんなに厚かましくてセコくて、落ちぶれた女優で、人も殺しているのに、チャーミングでゴージャスでものすごくカッコいいのです。
後半はオデットがおいしいところを持って行った感もあり、マドレーヌたちが霞んでみえたほど。
こんな婦人になりたいとあこがれるほど素敵でした。
殺されたプロデューサー以外はだいたい皆ハッピー! というエンディングが最高なコメディ。漫才に例えると、キャストが総出でボケ続けているようで、ツッコミどころが満載です。
これは誰かと一緒に観て分かち合いたかったです。夫婦で観ても良かったかも。
今年は映画館で100本観るのを目標にしていますが、年間ベスト10に入りそうです。やはりフランソワ・オゾンに間違いなし、と確信した1本でした。
配信でもなんでも、未見の作品をどんどん観ていこうと思います。