『BAD LANDS / バッド・ランズ』感想文・安藤サクラLOVE!ラストシーンに尽きる(涙)

クライム・サスペンスとかフィルム・ノワールとか言われるジャンルです。

裏社会の暴力や犯罪を描き、人間の欲望や悪意をあぶり出す…私はそれほど得意なジャンルでもないのです。「悪いことしたらダメ!」と思うタイプで、それじゃあ話にならないですからね。

ホラーは好きなのにおかしなものです。

今回は、安藤サクラ見たさで鑑賞しました。どんな演技を見せてくれるのだろうという期待値が大きかった、にもかかわらず、ハードルを軽く超えてくる凄い演技! サクラさん天才です。

別の方だったら行かなかったかもしれないし、満足度もこれほどなかったと思います。

原作・意味

2014年『破門』で直木賞を受賞した、黒川博行(くろかわ・ひろゆき)氏による小説『勁草』(けいそう)が原作。

主人公を男性から女性に変え、タイトルも「主人公たちが集まる場所の名前にふさわしい」という監督の発案から『バッド・ランズ』となったそうです。

「勁草」とは風雪に耐える強い草、また、思想・節操の堅固なたとえ(デジタル大辞林より引用)だそうです。

確かに、主人公ネリは耐えて耐えてその末に…という感じです。

監督・キャスト

監督・脚本

原田眞人

キャスト

安藤サクラ(橋岡煉梨・ネリ)

山田涼介(矢代穣・ジョー)

生瀬勝久(高城)

吉原光夫(佐竹)

天童よしみ(新井ママ)

江口のりこ(日野班長)

宇崎竜童(曼荼羅)

雑なあらすじ

東京から「逃げて」来たネリは、特殊詐欺グループの一員として大阪で生計を立てている。名簿屋の高城は実の父親であり、血の繋がらない弟のジョーに手を焼きながらも、その世界で生き延びている。

ある夜、さらなる犯罪に手を染め、ネリとジョーは3億円の大金を手にする。しかし、そのことで各方面から狙われることとなる。

彼女を子どもの頃から知る元ヤクザの曼荼羅の手を借り、大金を手に二人は逃げようとするが…。

個人的感想(ネタバレあり)

冒頭から受け子の見張りとして動く安藤サクラ。その動きを追っていくのですが、かなりのスピード感でネリにグイグイ引き込まれていきます。

朝ドラ『まんぷく』で夫の夢を支えていた福ちゃんの役とは180度違う、男性にすら見える立ち居振る舞い。犯罪に手を染めているにもかかわらず、カッコよく見えてきます。

この人お化けだ…(もちろんいい意味)と驚きました。『万引き家族』『怪物』で「安藤サクラ苦手かも…」と思ったのは、演技が上手すぎたからだと気づきました。

そして、山田涼介さん。アクの強いネリと組んでも、負けない個性を発揮していました。このジョーという男が本当にどうしようもないクズ弟で、山田くんがこんな役を演じるんだね…とひじょうに新鮮でした。

悪い奴には違いないのですが、小物感が半端なく、単純で頭もあまり良くない。これがまた物悲しくて、すごくいいキャラクター。

ネリのつらい生い立ちを知る存在であり、重大な秘密も共有しています。

特別な関係でありながら、腐れ縁でもあり、愛情もあり、二人が複雑な関係であることが、物語に奥行きを作り出していました。

ジョーはネリに対して、肉親というより、女性として愛情を持っているようで、それをはっきりと語らないのも良かったと思います。

そして、このま映画の一番の見所は、やはりラストシーンでしょう。

凌辱と搾取の中に生き、犯罪者にまで身を落として、生き抜いてきたネリが、最後に見せる脱出劇がすばらしいカタルシスを生んで、痛快でした。

ジョーの犠牲もあったのですが、そんなことも顧みず、自分の目的を遂行するのがネリらしく、奇人「月曜の巫女」に扮した演出も最高に良かったです。

あの、扮装を脱ぎ捨てて走るネリのシーン。そのための2時間23分だったように思います。

意外と長かったんだな、と今思いましたが、全く感じさせない映画でした。娯楽性にあふれた、とても面白い作品です。配信が始まったら、ぜひもう一度観たいと思います。