すぐそばにいながら、お互いの側へは、決して行くことのできない二人。
対比、逆転の場面を多用することにより、ヘジュンとソレの間にある、超えられない隔たりを表現していると感じました。
第一の事件が一応の結末を迎え、第二の事件から意外な方向へ展開していきます。
抑制された恋愛のもどかしさ。そこはかとなく感じられる異常性。
大人っぽく、味わい深い、サスペンスです。
(雑なあらすじ)
優秀で仕事熱心な刑事のヘジュン(パク・ヘイル)。男が山から転落死した事件で、妻のソレ(タン・ウェイ)を取り調べるうちに、気持ちが傾いていく。
ソレもまた複雑な思いを抱えながら、ヘジュンに惹かれていくのだが、事件は一応の決着を迎え、二人の間も途切れる。
そして、二人は再び別の殺人事件で再会することになる。被害者はまたもやソレの夫であり…。
公開後、一週間すぎた平日でしたが、多くの方で席が埋まっていました。もしかすると2回目の方も多いのかもしれません。
第一部がわかりやすく、想像できる展開だったため、油断してしまい、後半すこし、わかりにくいところがありました。
随所で凝った演出がされていたため、配信されたら、私ももう一度見てみたいです。
全体を通して見ると、一部は前フリに過ぎず、本質は第二部にあります。
また、場所を移して、全てが逆転したのが、とても興味深いのです。
山から海へ。信頼から疑いへ。自分を守ることから、相手を守ることへ。解決から未解決へ。
ソレの思いの深さが浮き彫りになる一方で、先の事件から、ヘジュンは刑事としての誇りを失っていました。
二人とも、出会ってから最後まで、気持ちが微妙にすれ違い続けるのが、見ていてわかります。
その気持をくみ取るつもりで見ていくと楽しいです。
ただ、これほど相手に執着するのであれば、何もかも捨てて、一緒になることも可能ではないでしょうか。
ヘジョンは妻が出ていきますし、ソレは夫が亡くなっている。できそうな気がします。
しかし、それは決してありえないことだと自分たちで思ってしまっているのです。
そこが、マゾヒズム的というか、二人のこだわり(!?)なのでしょうか。
結ばれないところに快楽を求めているように、見えなくもないのです。
結果、悲劇となるわけですが、未解決になることで記憶に残りたいというソレと、血眼になってソレを探すヘジュン。
この二人は本当に同じ性質を持っている、別の世界の人たちなのだと感じました。
考えてみれば、DV夫とばかり結婚するソレは闇を抱えているようですし、ヘジュンは睡眠障害で未解決の殺人事件に強い執着を持つワーカホリック。平凡とは言い難い二人です。
異常×異常=純愛に見えてしまうという不思議さがありました。
なんだかおかしいけれど、そういうものかと思って見てしまうのです。
この二人が出会ってしまったことが、そもそもの悲劇だったのでしょうね。
面白い作品でしたが、あえてひとつ残念なところを挙げるとすれば「スマホの多用」でしょうか。
誰のスマホがどうなったのかが、一瞬わからなくなりました。
映画の時ぐらいスマホのことは忘れたいと思って電源を切っているわたし。
あまり見たくないな…と、その辺りが少し気になったところです。
見終わって、ユーミンの「青春のリグレット」のサビを思い出しました。
忘れられるより憎まれてもいいから覚えていて欲しい、そんな気持ちも、わかるような、わからないような…まぁ、愛の形はいろいろですね。
こじれた恋愛映画が好きな方におすすめです!