2年半前の作品。どうしてその時に見なかったかと後悔しました。
人生のベスト10に入るぐらい好きになった作品です。

奪還しないし、リベンジしないし、スリラーじゃないし…
目次
オレゴンの森の奥深くでひとり孤独に暮らす男ロブ。彼にとって唯一の友だちは忠実なトリュフ・ハンターのブタで、収穫した貴重なトリュフを取引相手の青年アミールに売った金で生計を立てていた。そんなある日、ロブはライバルのハンターから襲撃を受けて負傷し、ブタを連れ去られてしまう。愛するブタを奪い返すため犯人の行方を追うロブだったが……。
2021年製作/91分/G/アメリカ
原題または英題:Pig
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
劇場公開日:2022年10月7日(『映画.com』より引用)
本当に良すぎて痺れました…ニコラス・ケイジの作品はたくさん見ているわけではありませんが、一番好きです。
91分、と短くても性急さはなく、濃厚な人間ドラマとなっています。
強奪された愛するブタを取り戻すために、知人アミールの手を借りて、森から街に出向くロビンフェルド。
彼の迷いのないストレートな執念がまぶしく感じられました。
盗んだ者への復讐というのではなく、ただただブタを取り戻したいという気持ち。
なぜこれほど執着するのかというと、ブタが人生のよすがであり「愛情が本物」だったから。さらには亡くなった妻の代わりのように愛していたから、とも言えそうです。
元はトップレベルのシェフであったロブが隠遁生活を始めたのは、愛する妻を失ったことがきっかけだと推測されます。それも本物の愛情であったがゆえに、深く傷ついたのでしょう。
ブタを盗ませたアミールの父は、金で解決しようとしますが、全くの的外れであり、人として相容れない種類ってあるんだなぁと感じました。
代わりのもので間に合わせることができるのがアミールの父であり、できない者がロブ。
ロブの崇高な精神は、アミールの父に分かりようがないのです。
私が好きなのは、行動を共にするうちに、若いアミールがロブの本気度に惹かれていき、友情が生まれていくところです。
初めは毎週会いながらもほとんど口をきかなかったロブが、アミールのためにパンを余分にもらって手渡し、ラストには再び木曜日に会う約束をしたのが良かったです。
(ブタがいなくてもトリュフは取れるようです)
そしてロブは結局ブタを取り戻せず、何も変わらなかったのか、というとそうではなかったのがまた良かったです。
途中までしか聞けなかった、妻の録音テープの続きを聞けるようになったのです。
妻の死を受け入れられるようになったということ。
彼は、大切なブタを失ってさらに傷ついたのに、どうして立ち直ることができたのか?と考えました。
・彼の心の柱というか、信念、信条のようなものが、「本気の勝負をしていない薄っぺらい知人たち」と再会することで、間違っていないと確信が持てた。
・昔住んでいた家や仕事場を見て回ることで妻が亡くなってからの時の流れを実感できるようになった。
・アミールとの心の交流
この3つで先に進める自信になったのではないかと思いました。
ロブの「汚い格好に崇高な志」というギャップがとても魅力的に演じられていて、ますまくすニコラス・ケイジのファンになりました。
2025年の始めからいい作品に出会えて本当に幸せでした。