かなり楽しみにしていて、初日に観に行きました。
主人公アイトール(ココ)を取り巻く世界が、もっと優しく描いているものかと思いましたが、親たちの無理解にただ苦しんでいるように見えました。
親子の信頼関係が構築されるところまで、しっかり描いてほしかったと思います。今回は辛口です。
イヤイヤ、家族寄り添ってないし!
監督
エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
キャスト
ソフィア・オテロ(アイトール、ココ)
パトリシア・ロペス・アルナイス(アナ)
アネ・ガバラン(ルルデス)
イツィアル・ラスカノ(リタ)
2023年製作/128分/G/スペイン
原題:20.000 especies de abejas
配給:アンプラグド
劇場公開日:2024年1月5日
夏のバカンスでフランスからスペインにやってきたある家族。
『ミツバチと私』公式HPより
母アネの子どものココ(バスク地方では“坊や(坊主)”を意味する)は、男性的な名前“アイトール”と呼ばれることに抵抗感を示すなど、自身の性をめぐって周囲からの扱いに困惑し、悩み心を閉ざしていた。
叔母が営む養蜂場でミツバチの生態を知ったココは、ハチやバスク地方の豊かな自然に触れることで心をほどいていく。
ある日、自分の信仰を貫いた聖ルチアのことを知り、ココもそのように生きたいという思いが強くなっていくのだが……。
性自認について心の揺れるアイトール、ということでしたが、彼はすでに「女の子になりたい」という自覚を持っていたように見えます。
髪を伸ばす、学校へ行きたくない、プールに入りたくない、友達がいない…など、アイトールの行動には、たくさんのヒントがありました。
にもかかわらず、両親、特に母親は見て見ぬふりをしていたのです。親の観察不足、理解不足が非常に問題です。
そして、それが完全に解消されたとは言い難いラストであり、非常にやりきれない、モヤモヤしたものを感じました。
いなくなったアイトールはどのように見つかったのか? また、その時どんなやりとりがなされたのか? 親たちは変わったのか、または変わらなかったのか?
その辺が全く描かれていませんでした。
また、全般にわたり、母親を見ていて本当に気が滅入りました。
愛情はありそうなのに、子どもには見せかけの理解を示すのみ。その点が子どもには本当に残酷です。
夫とは言い争いばかりしていて、お金もなく、ずっとイライラしています。
彫刻家という設定ですが、あんなにカリカリしていて、いい作品が作れるはずないよね…
そう思っていたら、案の定、就職するのに父親の作品を使ったりして、道徳心もありません。
どうしてこんな母親に設定したのやら…です。
多少事件があっても、この親が変化するのは難しそう。
ですから、最後にアイトールに対して泣いて謝るくらいの演出は必要だったのではないでしょうか。
唯一、養蜂おばさんがアイトールの理解者となり、彼女を認め、頑なな心を開かせました。
心温まる交流が見られて、この二人のシーンにはホッとします。
ただ、夏休みにしか会えないおばさんでは、この子を救うことはできないのです。
このおばさんの役割を、お母さんがやらなくては。
それなのに、母親は嫉妬なのか何なのか、養蜂おばさんに腹を立てたりして、本当に駄目すぎて悲しくなります。
ここでつまらない親のプライドなど捨てて、頭を下げておばさんから学べばいいのに、それっきり。
雰囲気が先行していて、風景や映像は美しいですが、最後にバシッとまとめてほしかったです。
子どもたちが男女問わず、水着や上半身裸になっている場面があり、特にアイトール役のお子さんは女の子のようで、これはかなり問題ではないかと感じましたし、ミツバチがそれほどフューチャーされていなかったのも肩透かしでした。
アイトールだけが泥中の蓮のように美しかったのですが、人によっては「わがまま」「問題児」にも見えるそうです。
そう思われる方に自信を持ってお伝えしたいのは「親がああだから、こうなるんです」ということです。
とにかくイメージビデオじゃないのだから、ラストをもっとうまく畳んで欲しかった。そうすれば鑑賞後感がかなり違って、良くなったのになぁ、と思いました。