非常にねちっこい不条理もの。主人公がクリスティーンから徐々にフィリピン人乳母のダイアナへと移っていきます。
謎と不気味さただよう、オカルト・ミステリーです。ひと癖ある作品で、この世界観にはまるかどうかは人それぞれですが、私は好きです! 復讐も大好き!
監督
ロルカン・フィネガン
キャスト
エバ・グリーン(クリスティーン、デザイナー)
マーク・ストロング(フェリックス、夫)
チャイ・フォナシエル(ダイアナ、フィリピン人乳母)
ビリー・ガズドン(ボブス)
2022年製作/97分/G/アイルランド・イギリス・フィリピン・アメリカ合作
原題:Nocebo
配給:クロックワークス
劇場公開日:2023年12月29日
ファッションデザイナーとして名を馳せるクリスティーン(エヴァ・グリーン)は、夫のフェリックス(マーク・ストロング)と幼い娘のボブス(ビリー・ガズドン)とダブリン郊外で悠々自適に暮らしていた。ある日、仕事中にクリスティーンはダニに寄生された犬の幻影に襲われる。8ヶ月後、クリスティーンは筋肉の痙攣、記憶喪失や幻覚などを引き起こす原因不明の体調不良に悩まされていた。そんな彼女の前に、ダイアナと名乗るフィリピン人の乳母が現れる。彼女は雇った覚えのない乳母を最初は怪しむが、ダイアナは伝統的な民間療法を用いてクリスティーンの治療にあたり彼女の信頼を得ていく。やがてクリスティーンは民間療法にのめり込んでゆくが、それは一家を襲う想像を絶する悪夢の始まりだった――
『NOCEBO』HPより引用
エヴァ・グリーンの口からなんか出てるぞ!
とても気になるキービジュアルですが、このようなシーンがあったかな?という感じで、どうも思い出せません。
話の流れから、この人の口からこれが出る設定ではなかったような気がしますが、終盤の怒涛の展開の中で出てきたのかもしれません。
あの『トーク・トゥ・ミー』も、憑依状態なのに石膏の手を握っていないので変でしたし、違っていてもいいものなのでしょうか。
宣伝広告ってあまり信用し過ぎない方がいいですね。
さてこのお話は、デザイナーのクリスティーンが犬の幻影を見るところから異変が始まります。どうして犬なのかはわかりませんが、ダニを出したかったから犬にしたのかもしれません。
そこから現れる体調不良は、ダイアナが特殊な能力で起こしていたもの、と私は解釈しています。
ふと疑問に思ったのは、ダイアナはクリスティーンの家に入り込むようなリスクを侵さなくても、この遠隔の能力で彼女を苦しめ続けても良かったのでは? ということ。
8か月でクリスティーンは相当参っていましたし、家族もぎくしゃくしており、このまま自滅しそうでした。
自らの手でとどめを刺したいという気持ちがあったのでしょうか。
それとも、特殊能力の次の宿主として、ボブスを取り込むことを見据えていたのでしょうか。
ともかく、ダイアナの思い通りに謎治療への依存が進むので、さぞかし気持ち良かったと思われます。
民間療法とは言っても、手をつないでグルグル回ったり、ストローを刺したコップの水をプクプクやったり、灰を食わせたり、何の意味もなさそうなことです。
表情ひとつ変えずに、淡々とクリスティーンを操作し、依存させていくダイアナ恐るべし。この恨みは本物です。
物語が進むに従って、謎の存在ダイアナの過去が明らかになってきます。
ダイアナの復讐の矛先がクリスティーンに向かうことには、今でも少し疑問が残っていますが、こいつのせいで…と思ったのだから仕方ない、反対はしません。
思う存分やってもらいましょう! というところで、終盤はかなり激しい攻撃をクリスティーンに仕掛けていきます。
もはや狂気の世界。ちょっと気の毒になるほどクリスティーンは痛めつけられ、その挙げ句…(涙)でした。
恨みの深さがうかがい知れるわけですが、ダイアナはクリスティーンと刺し違える覚悟をしていたのですね。
娘を失った絶望が深く、自分の身も捨てる決意をしていたのです。
終盤まで比較的淡々と物語が進んだのですが、最後になって一気に異常な事態へと突入する、その変化が大変面白かったです。
華やかなデザイナーから、火だるまの縫い子へ…ダイアナよくがんばりました! とてもいい終わり方でした。
その能力が少し羨ましいような気がします。そういう鳥がいたら、飲んじゃうかもな…。