『四月になれば彼女は』映画感想文・オバサンが森七菜推しでもいいじゃないか

「自分が幸せになってはいけないのではないか」と幸福への罪悪感を持つことがあります。

若い頃そう思っていたので、この物語に登場する男女に共感できる部分がありました。

本来、誰に遠慮することもなく幸せを追い求めていけばいいのですが、年齢や環境、資質から難しいこともあると感じました。

あらすじ


精神科医の藤代俊のもとに、かつての恋人である伊予田春から手紙が届く。「天空の鏡」と呼ばれるボリビアのウユニ塩湖から出されたその手紙には、10年前の初恋の記憶がつづられていた。その後も春は、プラハやアイスランドなど世界各地から手紙を送ってくる。その一方で藤代は現在の恋人・坂本弥生との結婚の準備を進めていたが、ある日突然、弥生は姿を消してしまう。春はなぜ手紙を送ってきたのか、そして弥生はどこへ消えたのか、ふたつの謎はやがてつながっていく。

2024年製作/108分/G/日本
配給:東宝
劇場公開日:2024年3月22日

『映画.com』より引用

感想(ネタバレ含む)

俊(佐藤健)、婚約者の弥生(長澤まさみ)、大学時代の恋人(森七菜)は良く似た人たちだと思います。

人間関係に難しさを感じながらも、誰かを好きになるのは止められません。

そして初めて会った頃のような気持ちが続かないのは当たり前のことで、彼らはとても真面目に戸惑い、苦しみ過ぎているように見えました。

「愛することをサボった」という表現がありましたが、悪いことをしたわけでもなく、ただ愛情の形が変わったか、なくなったか、というだけです。

俊は、弥生を失ってその存在の大切さに気づき、弥生は、失いそうになった俊への愛情を取り戻せるかどうか、確かめるために去りました。

そう簡単に言うと、ありふれていてファンタジーのようですが、キャストの皆さんが上手なので、見ている間は違和感なく受け止めることができました。

特に、私が泣いたのは全て森七菜さんのシーンでした。

ウユニ、プラハ…と巡る景色の美しさと森七菜の透明感と可愛さ。

『銀河鉄道の父』という映画で、宮沢賢治の病気で亡くなる妹役の森七菜さんに号泣させられたことがありますが、今回も彼女(だけ)に泣かされました。

本当は色々と気になるところがあったのですが、森七菜さんが可愛かったので全部許したいというのが本音です。

特に、俊が周りの人達からやたらと責められるのが不思議であり、ちょっと気の毒でした。

「そんな状態で、なんで結婚しようと思ったの?」と先輩医師

「お姉ちゃんのことわかっていない」と妹

「まだわからないの?」と友人

弥生が急に出ていったのは、俊のせいなのでしょうか。

黙って出ていった弥生にも問題があるように思いますし、恋愛なのだからお互い様のような気がします。

周りがとやかく言うことに少し違和感がありました。

とにかく、人間関係は変わっていくもの。先のことは分かりません。

うまくいかなければ、その時考えればいいので、愛のゆくえなど小難しく考えずに、目の前の人を大切にしていくのがいいのではないでしょうか。

なんとなくですが、この先、主人公の二人は結婚したとしても別れそうです。

それもまた人生なので、悪くはありません。

「愛を終わらせない方法とは?」

弥生の答えは「手に入れないこと」でしたが、愛が終わったら終わったでいいじゃないかとも思いました。