【Prime Video】『アメリカン・フィクション』映画感想文・劇場公開してほしかった!

「第96回アカデミー賞脚色賞」受賞作品です。日本では劇場公開されず、配信のみです。

黒人差別問題がテーマのブラックコメディで、ちょっとニュアンスがわかりにくい部分もありましたが、イメージしていたようなヘビーなものではなく、とても見やすくて軽やかであり、大変面白かったです。

「人種問題は泥臭く描かれる」というのも私の先入観だったなと後から気づきました。

あらすじ

作品に「黒人らしさが足りない」と評された黒人の小説家モンクが、半ばやけになって書いた冗談のようなステレオタイプな黒人小説がベストセラーとなり、思いがけないかたちで名声を得てしまう姿を通して、出版業界や黒人作家の作品の扱われ方を風刺的に描いたコメディドラマ。

2023年製作/118分/アメリカ
原題:American Fiction

『映画.comより引用』

感想(ネタバレ含む)

「脚色賞」とは原作があるものから脚本を起こしたものであり、続編やリメイクもこの中に含まれます。

『アメリカン・フィクション』は原作小説があり、脚本家コード・ジェファーソンの監督デビュー作品です。デビューでオスカーは嬉しいでしょうね!

最初から半分くらいは主人公の作家モンク(ジャズの巨匠セロニアス・モンクに由来する通称)に、ひたすら苦難が訪れます。

仕事や家族の問題が山積みになり、貧しい黒人イメージを売りにした本ばかり売れ、自分の本はろくに売れない。

ストレスがピークに達し、ヤケクソで書いた仮名の小説がヒットしてから、どんどん面白くなってきました。

前半は問題提起であり、後半はモンクが葛藤から気づきを得ていく形となります。

・自らが黒人と言っても、自分以外は医師の家庭で裕福。どこか貧困層を見下している自分がいる。

・ステレオタイプの黒人像を描くことも、黒人のクリエイターの生き方として必要。

・兄が連れてきた白人のゲイの人たちを排除しようとした自分。

・白人嫌いの母が痴呆症になるのを見て、いろいろと考える。

…などなど、さまざまな気づきを経て、こだわりの強い自分の考え方を見直していきます。

そして、コメデイらしく、売れればなんでもいい出版社の態度に、怒ったり呆れたり、そんな面白さもふんだんにありました。

私が最も「やられたなー」と思ったのはラストシーンです。

これまでの全てをひっくるめて映画に…という展開。

どこからどこまでがフィクションなの? と最後にきて混乱させられました。

モンクはベストセラー作家であり、チャラい兄(医師)が派手なスポーツカーで迎えに来ています。

「奴隷の衣装」を着た休憩中の黒人俳優と軽く目配せをし、「映画化が決まった」と自虐的に兄に話しながら、車で走り去ります。

皮肉のピリッと効いたラストシーンで、最高でした。

コメディでありながら、ヒューマンドラマでもあり、楽しく見ながらも、フラットな目でさまざまな価値観を知る大切さを知りました。

初監督作品にしては、相当お上手だと思い、今後が楽しみなコード・ジェファーソン監督です。

おそらくTVシリーズなどの製作から、求められるものと書きたいもののギャップに悩んだりされたのかな? と想像してみたり。

現代の人種差別のありようを垣間見て、とても勉強になりました。