クリストファー・ノーランを何作か見て、少し疲れたため、ハートウォーミングな匂いのする今作を観てみました。
「え、そうなるの?」という意外な展開になりましたが、楽しくてハッピーな作品でした。
目次
ニューヨーク、ブルックリンに暮らす精神科医のパトリシアと、現代オペラ作曲家のスティーブンの夫婦。人生最大のスランプに陥っていたスティーブンは、愛犬との散歩先のとあるバーで、風変わりな船長のカトリーナと出会う。カトリーナに誘われて船に乗り込んだスティーブンを襲ったある事態により、夫婦の人生は劇的に変化していく。
2023年製作/102分/G/アメリカ
『映画.com』より引用
原題:She Came to Me
配給:松竹
劇場公開日:2024年4月5日
私の観た回は、観客が中高年(夫婦)ばかりでした。何か安心安全な内容に思えて、見やすそうな印象は確かにあります。
ただ、収まるべきところに収まる話ではなかったんですよね…。
妻(アン・ハサウェイ)は潔癖症、夫(ピーター・ディンクレイジ)はうつ病、他にも恋愛依存、子どもへの執着など、登場人物それぞれが、心に何かしら問題を抱えています。
高校生の子どもたち(恋人同士)の方がよほどしっかりして賢いのが皮肉っぽくて良いです。
なんやかんやあって、この夫婦、元のさやに収まる話だと予想していましたが、思わぬ展開となり、夫は自分につきまとっていたストーカー女性と結ばれます。
一時は彼女の思い込みの激しさに恐怖を感じたにもかかわらず、なぜ惹かれることになったのか…その辺りの描かれ方が少し足りなかった気がしました。
いつの間にストーカー女性を好きになっていたのか、分かりにくかったのです。
彼女が子どもたちを救う手助けをしてくれたことは確かです。
ただ、それが恋愛に結びつく理由としては弱く、不思議な展開だなと思いました。
結局、パートナーの元に戻って絆が強まるという方向ではなく、それぞれが自分の進むべき道を見つけ、互いを尊重し認め合うといった流れとなります。
バラバラの問題を抱えていた登場人物たちが、時を経て(一年くらい?)ひとつのオペラに共感し、感動しているシーンで終わりました。
最後に映ったアン・ハサウェイの姿に全部持っていかれた感があり、ちょっと笑えました。
それぞれ「本当にその道でいいの?」とは思いましたが、本人が満足しているならそれで良いのでしょう。
あと一点『ブルックリンでオペラを』という邦題が、いまひとつ合っていないような気がしました。
原題は『She Came to Me』、スティーブンが書いたオペラのタイトルでもあり、受けるイメージがずいぶん違います。
ブルックリンもオペラもさほど重要には見えず、昔のロマンチック・コメディのような邦題には少し違和感がありました。
かといってどうつければいいのか…直訳でもいい気がしますが、まぁちょっと今作は難しいですね。
アン・ハサウェイはさすがの華があり、綺麗だったのと、フレンチブルが可愛くて癒やされました。
派手さはありませんが、最後はハッピーエンドで、うまくまとまり、そこそこ良い気分で劇場を後にできました。
たまにこういう作品が観たくなるので、ちょうど良かったです。
多様性の話か…と時代を少し感じたものの、気楽に映画を見たい気分の時にはオススメです。