
「あなたの性癖に刺さる…」性癖には刺さらなかったけど、すごく面白かったです。
鬼才デヴィッド・クローネンバーグの『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』という映画が昨年ありましたが、これは息子ブランドン・クローネンバーグによる「リゾートスリラー」です。
リゾートスリラーというジャンルは知りませんでしたが、イメージはつかみやすかったです。
まるで親子で変態度を競っているかのような、こちらも強烈なエログロに幻覚ありのR18指定映画でした。
最近見た中では、かなりインパクトの強い映画でした。
目次
スランプ中の作家ジェームズと資産家の娘である妻エムは、高級リゾート地として知られる孤島へバカンスにやって来る。ある日、ジェームズの小説のファンだという女性ガビに話しかけられた彼らは、ガビとその夫と一緒に食事をすることに。2組の夫婦は意気投合し、観光客は行かないよう警告されていた敷地外へとドライブに出かける。実はその国には、観光客は罪を犯しても自分のクローンを身代わりにすることで罪を逃れることができるという恐ろしいルールが存在しており……。2023年製作/118分/R18+/カナダ・クロアチア・ハンガリー合作
原題:Infinity Pool
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2024年4月5日
どんな罪もお金次第、自分のクローンを作り、代わりに死刑として償わせるという島で、金持ち達が倫理感などかなぐり捨てて、享楽に耽ります。
初めは嫌悪感を示していた主人公ジェームスも、次第にどっぷりとその世界にはまり、抜け出せなくなってしまいます。
金持ちたちのイカれっぷりが素晴らしく、やはりミア・ゴスは最高だと思いました。
『X』『パール』のサイコパス演技で注目を集めた彼女ですが、意外と最初は気づきませんでした。
お金持ちの奥様として登場して、すごく可愛い!と思ってよく見たら眉毛が薄いしミア・ゴスじゃん!と分かりました。
そこからはもう、この人何かやらかすに違いない…と、不穏しかありません。
段々と本性が現れて、ジェームスを誘惑から次第に追い詰め、狂わせ、依存させていく様子が、狂気じみていて素晴らしかったです。
一方ジェームスも非常に流されやすく、深みにはまっていく様子がわかりやすくて面白く、どことなくコメディチック。
いちいち過剰反応で、すごく怖がり、怯えていたかと思うと急に攻撃的な人物になったりします。
『ノースマン 導かれし復讐者』で獰猛なバイキング戦士を演じた人と同一人物とは、ついさっきまで気づきませんでした。
色々なことをやらせ過ぎて、ある意味チャレンジングとは言えるでしょうが、ミア・ゴスにしてもアレクサンダー・スカルスガルドにしても、よくやるなぁ…と感心しきりでした。
ラスト、憑き物が落ちたように元の金持ち奥様に戻って送迎バスに座っているガビ(ミア・ゴス)が、ジェームスをガン無視しているのもびっくりでしたし、あれほどひどい目に合ったにもかかわらず、無視されて寂しそうなジェームスも哀れでした。
雨季に入った人気のないリゾートホテルに戻り、放心状態のジェームス。
これはどう見るか…空港から一人帰宅せずに、ホテルに戻ってしまったと考えるのが普通でしょうか。
もしかするとどこかでクローンと本物が入れ替わっていたかもしれません。
しかし、記憶も合わせてクローンになっているので、誰が本物で偽物かは、もはやどうでもいい話となっているところが面白いのです。
クローンが殺されていくのを見る快楽に取り憑かれた男。末路は廃人となり、ディストピア的な最後となりました。
去年公開された父クローネンバーグの『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』もかなり変な映画でしたが、こちらも相当なもので、変態映画として大変面白く鑑賞しました。
それにしても変な親子です…。