
2023年の『イニシェリン島の精霊』が印象的だったので、マーティン・マクドナー監督の作品を見ようと、レンタルしました。300円だったかな。
娘を殺害した犯人を探してほしい…そんな愛情物語かと思いきや、話が転がり続けてとんでもない展開に。
全てが燃料投下となり、怒りが怒りを呼び、暴走する母親ミルドレッド。
イニシェリン島と同様にのどかな田舎町での日常が、狂気の沙汰に発展します。
人間紙一重の恐ろしさを味わいました。怖いけど面白かった!
目次
米ミズーリ州の片田舎の町で、何者かに娘を殺された主婦のミルドレッドが、犯人を逮捕できない警察に業を煮やし、抗議のため町はずれに巨大な3枚の広告看板を設置する。
それを快く思わない警察や住民とミルドレッドの間には埋まらない溝が生まれ、いさかいが絶えなくなる。そして事態は思わぬ方向へと転がっていく。
『映画.com』より引用
この映画の面白いところは、人物の見え方が変化するところです。
最初共感していた人が「やっぱりオカシイ!」となったり、
敵かと思った人が実はいい人だったり、
悪いと思ったらいい人に変わったり、
いい人のままだったり、ずっと嫌な奴だったり。
自分のものの見方にすっかり自信がなくなりました(笑)
というか、そのように仕向けている、ある種のミスリードであり、監督が非常に巧いなと感じます。
初めは娘を亡くした母親に共感するのですが、ミルドレッドは私の許容の域を軽く超えていきました。
警察署長の不治の病を知っての看板設置は、まあ理解できます。しかし、歯科医の指に穴を開けるところで「ちょっと待て?」と思い、火炎瓶で警察署に放火、しらばっくれ、あげくに関係のないレイプ犯を追い、犬猿の仲だった元警官とアイダホへ向かうという結末には仰天です。
何が目的なのかを途中から見失っていることが、この映画の”おかしみ”のひとつ。
当初彼女が求めていたのは娘を殺した犯人の逮捕ですが、警察署に放火などすれば、資料が燃えてしまい、余計に逮捕が難しくなってしまいますよね。
人間関係がこじれて狂気に発展するさまを、滑稽さも交えて描いているのですが、主役のフランシス・マクドーマンドが、ニコリともしないマジ演技で、大変シュールです。
そのため、面白がっていいのか悪いのか、微妙な気持ちになりました。
考えてみれば、娘の事件は母親のミルドレッドにも責任の一端があり、親子関係も決して良いとは言えなかったので、自責の念にとらわれてもおかしくない状況。
それが全て他者への怒りに転じたことが、とても興味深かったです。
というのも、ちょっと知ってる人に似てるんですよね…キャー怖い!
この映画は『イニシェリン島の精霊』よりもストーリーに起伏があってわかりやすいし面白いかもしれません。
ただ、私は『イニシェリン島の精霊』に同性愛の要素を見い出して、勝手に「それは苦しい!!」と大喜びしているので、それにはちょっと勝てないかな?という感じです。