『アンダーカレント』(2023)映画感想文・U-NEXTにて鑑賞

見逃していた『アンダーカレント』がレンタルになっていたので鑑賞しました。

大変良くて映画館で観ればよかったと思いました。近くでは私の苦手な新宿バルト9でしかやっていなかったので、次からは別の街にも足を伸ばします。

バルト9…行きつけの美容院の人も嫌いだと言っていたっけ…何かあるな。

監督・キャスト

監督

今泉力哉

キャスト

真木よう子(関口かなえ、銭湯経営)

井浦新(堀隆之、従業員)

リリー・フランキー(山崎道夫、探偵)

永山瑛太(関口悟)

江口のりこ(菅野よう子)

2023年製作/143分/G/日本
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2023年10月6日

あらすじ

かなえは家業の銭湯を継ぎ、夫・悟とともに幸せな日々を送っていた。ところがある日、悟が突然失踪してしまう。かなえは途方に暮れながらも、一時休業していた銭湯の営業をどうにか再開させる。数日後、堀と名乗る謎の男が銭湯組合の紹介を通じて現れ、ある手違いから住み込みで働くことに。かなえは友人に紹介された胡散臭い探偵・山崎とともに悟の行方を捜しながら、堀との奇妙な共同生活の中で穏やかな日常を取り戻していくが……。

『映画.comより引用』

感想

最初、物語に入っていきづらく、143分大丈夫だろうかと少し心配になりました。

真木よう子さんみたいな美しい方を残して失踪する夫、という設定に現実味が感じられなかったのと、状況説明が少しずつで、物語が動くまで時間がかかったからです。

後になって、それも必要な時間だったことが分かりました。

あと、水に沈むかなえの姿から、何かが心の底にあるという示唆は感じ取れました。

行方不明の夫について、かなえはまず「自分に悩みを話してくれなかった」「相手のことがわからなかった」ことに傷つきます。

次に、心の中で蓋をしていた記憶が蘇り「自分のことさえも分かっていなかった」ことに衝撃を受けます。

この気付きによって、彼女の雰囲気が大きく変わったのが印象的でした。

それまでの少し険のある態度から、他者を理解しようとする優しい表情に変わったのです。

誰しも心の奥底に抱えている気持ちというものがあり、自分ですら理解しきれていない。

しかし、大切なのは相手を理解しようとする行為そのものである。

そんな普遍的なテーマが見えてきました。

また、一方で堀さんの苦しさにも共感できました。

彼は「自分の正体を明かせば、彼女を傷つける。自分にできることは何もない」という無力感に苦しんでいて、そっと姿を消そうかと考えています。

彼もまた、そう言いながら、心の底ではかなえの力になりたいと願い、愛情も感じているようでした。

終盤で、涙ながらに話し始める堀さんの姿に「話せるようになって本当によかった!」とこちらも安堵の涙が。

彼らはこの先どうなっていくのか、はっきりと描かれていませんが、ラストシーンに希望が見えて、鑑賞後感はとても爽やかでした。

冒頭で感じた「真木よう子さん綺麗すぎ問題」もいつの間にか忘れて、物語に引き込まれ、井浦新さんも私が見た中で過去最高に素晴らしかったです。

シュッとしていてカッコイイ方だとは思っていましたが、それゆえあまり強い印象がなかったのです。

持ち物はカバンひとつ。作業着姿で汗をかきながら銭湯の仕事をする、無口で泥臭い人物像を、雰囲気たっぷりに表現されていて見事でした。

『福田村事件』でもかなり注目はしたのですが、さらに「いい俳優さんだぁ…」と感激しました。

申し訳ないけど見るつもりがなかった『人生に詰んだ元アイドル〜』も、配信が始まったら見てみます。

他のキャストの皆さん…リリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ、康すおん、中村久美、内田理央…とても良くて、配役の良さも堪能しました。

U-NEXTのポイントがある方、現時点で770円ですが、損はしません。ぜひご覧になってみてください。