『キラーカブトガニ』感想

二足歩行のカブトガニが向かってくるということは、甲羅と反対側の弱点をさらしながら来るということだけどいいのかな…まぁ、いいか。

B級モンスターパニック映画という印象を持たれるかもしれませんが、長編初監督のピアース・ペロルゼイマー監督が製作・脚本・編集も兼ね、6年の歳月をかけて作り上げたという、愛と執念を感じる映画でした。

日本の怪獣映画、またモンスターパニック映画が大好きというピアース監督。小さい頃から慣れ親しんだ「カブトガニ×モンスター化」という必然の融合だったようです。

水着女性が逃げまどうシーンはない。そして見るからに人が良さそうなピアース・ペロルゼイマー監督。肩に注目。

あらすじ(一応)

カリフォルニアのとある海辺の町。原子力発電所の爆発(処理?事故?)により放射能を浴び、カブトガニが密かに増殖したり巨大化したり色々する。

保安官ハンターは各地で惨殺死体を目にするが、その正体はなかなかつかめない。一方その弟で車椅子の少年フィルは科学に没頭しながら幼馴染のマディや留学生のラドゥらとともに高校生活を送っている。

密かに増殖、巨大化していたカブトガニは、ついにダンスパーティ(プロム)でその正体をあらわし、会場は大惨事となる。やっとのことで逃げ出したハンター、フィル、マディ、マディの母で教師のアナリス、ラドゥは、カブトガニ群を退治する策を練り始める…。

キャラ設定(人間)が丁寧

後半までカブトガニ群は全貌を現さず、ハンター、フィル兄弟を中心に人物描写が続きます。それが意外なほどにちゃんとしていて、科学オタクやいじられキャラの少年がまず餌食になっていくような設定ではないところがとても良いです。

特にラドゥは、発達の凸凹があるようで同級生から呆れられたり、相手にされなかったりするところがありました。ものすごくいいキャラで、でも「いつかやられるのでは…」と心配になる役どころです。そのラドゥにラストまでしっかりと活躍の場を与えた監督の目線が、とても嬉しかったです。

フィルにしても、車椅子という設定が生きていて、歩けないというハンディを知恵と工夫で乗り越えたり、さらには人類を救う発明をするところがとても良かったです。他の人と同じようにできないことがあっても、それぞれ別の能力があり、それを発揮していけばいいのですから。

個人的にはアナリスの教え子であったハンターが(勤務中に大麻を吸ったりするいい加減な保安官)アナリスの前では妙に純情でモジモジしているところがツボでした。結構あからさまにアプローチされているのに、及び腰で可愛いかったです。

キャラ設定(カブトガニ)が丁寧

カブトガニに大中小があり(第一形態…というより大中小のイメージ)それぞれが非常に味わい深く、手作りの良さをひしひしと感じました。

最終的には怪獣映画のようになっていきますが、日本の怪獣映画が海外でリスペクト、解釈されてこの映像になっているのだなぁという感慨があります。

カブトガニ(大)と(中)は人間が入っているようにしか見えませんから全然怖くありませんし、(小)にいたっては街にはびこってエンジョイし始めます。

キラーカブトガニは音楽の好みがあるようで、DJのプレイに合わせて身体を揺らすという可愛さ! DJも思わず油断してしまいます。ただ、別の曲になり、それが気に入らないとDJを襲って食ってしまうという短気なところもありました(笑) さらには自分でブースを操作して好みの曲をかけるという知能の高さも備わっていたようです。

人の残り物をちゃっかり食べたり、BARではお酒を飲んだり、保安官の上司を襲って見ていたAVを代わりに鑑賞したり、古代生物とは思えない適応能力を発揮していました。

まるでグレムリンのようですが、気持ち悪さだけではなく、可愛さも必要と監督は考えていたそうです。

最初はポケモンのカブトプスをイメージされていたそうで、カブト→カブトプスの進化を参考にされたのでしょう。他にもエイリアンやなど古今東西のさまざまなキャラクターを彷彿とさせる造形でした。

グッズ化すれば女子中高生がカバンに付けそうなので、日本だけでもやればいいのに…と思います。

まとめ

真面目な話、この映画からどんなメッセージを受け取ったかというと「好きなことはとことんやれ、それが誰かの役に立つ(こともある)」ということです。

結局、好きなことでなければ続けられないのですから、そこを伸ばしていくのが成功の近道というしかありません。

今回、初めて監督のお名前を知りましたが、ピアース監督は日本と親和性が非常に高い方とお見受けしたので、今後、日本国内で人気者になると思います。私の中で「中野ブロードウェイを案内したい外国人一位」です。

絶対見るべき一作かと言えば人によるので何とも言えませんが、どこかの動画配信で見かけたらおすすめします。ただし冒頭から大人のシーンがあるのでお子さんとうっかり見始めるとアレアレ…(汗)となるのでくれぐれもご注意ください。一応R15ですからね。

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