ものづくりに取り組む男子高校生と教師を主軸とした物語です。
爽やかな鑑賞後感でしたが、これでいいのかな?と少し気になるところもありました。
ヨルシカのMVなどでとても有名な方々で、YouTubeでの再生数も本当にすごいですが、映画となるとまた別の難しさがあるのかな…と感じずにはいられませんでした。

目次
ミュージックビデオの制作に情熱を注ぐ男子高校生と音楽の道を諦めた女性教師の出会いを軸に、モノづくりの楽しさや苦しみを瑞々しく描いたオリジナル長編アニメーション。
石川県で暮らす男子高校生の朝屋彼方は、MV(ミュージックビデオ)の制作に没頭している。ある夜、街で映像のモチーフを探していた彼は、雨の中でストリートライブをする女性の歌声に衝撃を受け、その曲のMVを作りたいと強く思う。翌日、彼方の学校の新任教師として現れたのは、なんと昨夜のミュージシャン・織重夕だった。2024年製作/68分/G/日本
『映画.com』より引用
配給:バンダイナムコフィルムワークス
劇場公開日:2024年6月14日
主人公・朝屋彼方のMVに賭けるモチベーションについて、何が一番だったのかが、私には分かりにくかったです。
「ただただ楽しい、MV製作が好きだという気持ち」
彼の様子は、そんな風に初期衝動に突き動かされて、夢中で好きなことに取り組んでいるように見えました。
私は本当はそれだけでいいと思うのです。
ですから、同級生の中川萌美のように、シンプルに楽しいからやっていると主人公にも考えてもらえたら、彼に共感して応援できたのかもしれません。
彼方(かなた)は一生懸命に好きなことをやっているように見えつつも、「自分が作ったモノで誰かの心を動かしたい」と考えていたようです。
これが彼のモノづくりのきっかけとパンフレットにしっかり書いていました。
私は最初「人を動かしたい」という素人ならではの甘さや傲慢さを描こうとしているのかなと思いました。そこが挫折ポイントなのかな?と。
しかし、たびたびその表現がされていて、それが良しとされているように見えてきて、もやっと気持ち悪さを感じました。
また一方で「音楽を作る人(先生)を応援したい」とも言っています。
タイトルもMVを作ることがエールだと表現されているので重要なはず。
楽しいのか、感動させたいのか、応援したいのか…。
本来はモノづくりを始めた頃って「楽しい、とにかく好き」なだけでいいのに、色々なものを乗っけようとしてしまったせいで、自分軸と他人軸が混在し、キャラクターにブレが生じているように見えました。
もう一人の主人公、教師の織重夕は、彼方のMVが曲の解釈を間違ったせいでヘソを曲げる、大人げない性格に見えたことが残念でした。
解釈違いが嫌なら、曲の意図について彼方と話し合っておけば良かったのだし、全く違ったものが提示されたのは、楽曲そのものに真意を伝える力がなかったということ。
作った側にも問題点があるのではないでしょうか。
彼女は彼方と出会ったことで、再びモノづくりの場へ戻っていくことを決意し、あっという間に教師をやめてしまいます。
元々、やりたいことをあきらめて渋々教師になり、毎日暗い顔で学校に来て、ほんとにほんとに、教師という仕事を舐めてんのかよ…と腹立たしく感じました。
ちょっとでもいいから、仕事に生き甲斐を見出そうとする努力をしてほしかったと思います。
こういう先生なら、やめて良かったのかもしれませんが。
他にも、彼方の機材が始めたばかりの割には揃いすぎていることや、モノローグの多用で全部口で説明してしまっていること、織重先生のモノづくりのきっかけは失恋、など、ひっかかる部分がたくさんありました。
そんな中で良かったのは、彼方と織重先生の別れの場面です。
この先タッグを組んで一緒にやっていくのではなく、握手をして「またどこかで!」と別れていくのが爽やかで良かったと思います。
まぁ… 彼方は技術はそこそこあるのかもしれませんが、楽曲の解釈が困難な子なので、先生もさよならするのが得策と感じたのでしょう。
高校生とはいえ、ただならぬ才能を感じたら「この子は!!」ということで手放さないし、一緒に組んで配信中心でやっていこうともちかけるはず。
爽やかかつシビアなのかな…いいラストだったと思います。