これはラストを話してはいけないので、ふんわり感想です。
(あらすじ)
川村俊介(中島裕翔)は翌日に社長令嬢との結婚を控えている、営業部トップの社員。渋谷でのサプライズパーティの帰り道に酔って穴に落ちてしまう。
気づくと足に怪我を負い、梯子も壊れたマンホールの底にいた。スマホで助けを呼ぼうとするが、意思疎通や場所の特定がなぜかできない。次第に慌て始めた川村はSNSを駆使して自分の居場所やこうなった犯人を特定しようとするが、彼の身の上に次から次へとトラブルが襲いかかる…。
まずは多くの方が書いておられるように、99分ほぼ中島裕翔さんの一人芝居で物語が進んでいきます。半径1.5メートルの穴の底という一か所ですが、画角のバリエーションや見えるもの(月明かりや雨、有機物の泡など)の変化があり、何より中島さんの演技により、全く飽きない展開でした。
初めのパーティでの川村は非常に好感の持てる男性として目に映りましたが、マンホールに落ちてからの川村に、少しずつ少しずつ違和感が出てきます。
ん? この人…こういう人なのかな、それとも、こういう状況だから???
徐々に苛立ちや疑心暗鬼に襲われていく川村を見ていて、その人間性が浮き彫りになってくるのです。ただそれも状況のせいかもしれない。そんな風にも感じて、見え方がぐらつきます。
なぜなら、冒頭の中島くんがキラキラして人柄が良さそうだったので「信じたかった」からです。自分の判断が間違っていたと思いたくないために、いい人バイアスがかかって見えていたのでした。がっかりしたくないですよね。
怪我をして、暗くて寒く、水や泡の溜まってきた穴の底、助けを呼んでもすぐに来てくれる人はいない、極限状態で人は誰でもこんな風になっていくものかもしれない。そんな考え方もできます。
しかし、時間が経つにしたがって第一印象が薄れ、川村という男の本性で上書きされていったのです。
その後は「とあるシーン」をきっかけに、震え上がる展開になりますので、ぜひご自身の目でお確かめください。
心身ともに汚れ役となって、中島さんにとってはチャレンジ作だったと思います。ただ、どんなに汚くなっても99分間、画面を持たせられるビジュアルの力と演技力を兼ね備えていらっしゃることが今回とてもよくわかりました。
真のスター性ということなのかな、見ていて全く嫌にならない汚さというものがあるのですね。
ラストの展開も含めて、大変楽しませていただきました。あえてファンでない方におすすめしたい映画です。あと、個人的には、奈緒さんのおっとり方言混じりの話し方に可愛さと不穏さをすごく感じて、GOODでしたよ。