どうにも理解しにくい映画ってありますよね、『2001年宇宙の旅』とか『テネット』とか。
わたらないままでも別にいいのですが、年取ってくると「このままわからないで一生終わるのか…」という気持ちになってきます。
デビッド・クローネンバーグの『ヴィデオドローム』もそのひとつでした。

目次
暴力やポルノが売り物のケーブルテレビ局を経営するマックスは、ある日、部下が偶然に傍受した電波から「ビデオドローム」という番組の存在を知る。その番組には、拷問や殺人といった過激な場面が生々しく映し出されていた。やがて「ビデオドローム」は見た者の脳に腫瘍を生じさせ、幻覚を見せるものであることがわかり、「ビデオドローム」に支配されたマックスの世界も均衡を失っていく。
1982年製作/89分/R18+/アメリカ
『映画.com』より引用
原題:Videodrome
配給:東京テアトル
劇場公開日:2023年6月16
昔見た時は異様な世界であることは感じ取れたものの、理解には及びませんでした。
幸い、近頃はネットで様々な考察を読めるので、調べれば理解の助けになる情報が簡単に手に入ります。
私は現在U-NEXTに加入していて、毎月消費した方がいいポイントというものが発生します。
残り一日で消費しなくては…でも有料レンタルで見たい映画がないなぁということで、書籍に目をやり、町山智浩さんの「ブレードランナーの未来世紀」を買うことにしました。
そこに『ヴィデオドローム』の解説が詳細に載っていて、読みながら鑑賞すると、とてもよく分かりました。
主人公マックスが拷問のビデオに強い興味を抱き、そこへ組み込まれていたビデオドロームに感染。現実と幻覚の境界がなくなり、自らがメディアの乗り物であるビデオデッキに(観念上)なっていきます。
要はそれだけの話なのですが、理解が難しく感じるのは、クローネンバーグが肉体の破壊をネガティブなものととらえていないせいかなと思いました。
マックスがヴィデオドロームに支配され、その世界に生まれ変わることが、全く悲壮感なく、むしろ肯定的に描かれているのです。
主人公は自殺して終わりますが、それすら新しい未知の世界への旅立ちのような、心躍る場面に見えてしまいます。
そう見方を変えると、クローネンバーグの作品は決して難しくありません。
肉体が傷ついたら不幸、ではなく、新しい肉体へ進化したのだという、究極のリフレーミングにより、独特な高揚感を生み出しているのです。
昨年公開の『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』は臓器にタトゥーを施す話でした。
80歳にして斬新かつ変態的で驚きながら見ましたが、今回『ヴィデオドローム』を見直して、彼の方向性が初期の作品から一貫して変わっていないことが分かりました。
本当に唯一無二の映画監督であり、誰も真似できないクローネンバーグというひとつのジャンルですね。
「この世に善も悪もない」というのも普通の人間にはなかなか難しい考え方です。
欲を言えばビジュアル先行で、オブジェに没頭しすぎるところがあるため、もうちょっとストーリーに力を入れてほしい気がしますが、ぜひまた新しい作品で楽しませてほしいと思います。