【U-NEXT】『夜の浜辺でひとり』(2018)映画感想文・夜の浜辺だったっけ?

ホン・サンス監督の『小説家の映画』を見た時に公私混同が受け入れられず、決別宣言をしたのですが、現在公開中の『WALK UP』にはキム・ミニが出ていないそうで、これは私とホン・サンス、和解のチャンスかも(笑)…と可能性を見い出しました。

そんなわけで、今作にチャレンジしてみたのですが、不倫関係となって間もない時期の作品のため、本物の愛であることをアピールする結果となっており、予想通りモヤモヤしました。

あらすじ

不倫スキャンダルにより、キャリアを捨ててハンブルクに逃げて来た女優ヨンヒは、会いに来ると言ったまま姿を見せない恋人を待ちながら、自身の気持ちもはっきり分からずに、後悔と欲望を引きずっていた。月日が流れ韓国へ戻ったヨンヒは、旧友たちとの再会をきっかけに女優復帰を考えはじめる。ひとりカンヌンの浜辺を訪れた彼女は、意外な方法で自身の心と向き合うことになり……。

2017年製作/101分/G/韓国
原題:On the Beach at Night Alone
配給:クレストインターナショナル
劇場公開日:2018年6月16日

『映画.com』より引用

感想(ネタバレ含む)

あらすじからわかるように、これは自分たちの関係を別れる設定にして作った映画としか思えません。

実際に別れる気がないことは交際9年ということからも明白。

愛人に自分の言わせたい言葉をセリフとして言わせるという、趣味の悪さを感じます。

キム・ミニが本当に魅力的に撮られていて、彼女(と自分)のための映画を作りたいというホン・サンスの心意気が感じられました(褒めていません)。

不倫9年とのこと。やはりキム・ミニが出ていると実生活が透けて見え、また、セリフも生々しく感じられます。

女優をやめてもったいないと言われ、不本意そうな場面は『小説家の映画』と似通っており、二人はムカついているんだろうなと察することもできます。

私もブチギレされると思いますが、ホン・サンスの映画にばかり出るのはもったいないと思います。

魅力的な方だし、もっといろんな作品に出ればいいのに…早い話が、別れた方がいいんじゃないの?と内心思ったりしています。

韓国国内では相当なバッシングを受けたことでしょうし、大変そうです…そんなことまで連想させる映画なので、作品として純粋に楽しめません。

映画内での女優ヨンヒ(キム・ミニ)と監督は、すでに別れていて、終盤やりとりをする監督の姿は彼女の夢です。

これには「なんだ夢オチか…」とがっかりしました。

みんなの前で痴話喧嘩をするのでおかしいなと思いましたが、ヨンヒの願望が夢となっていたのです。

本当は監督に後悔してほしい、今でも愛情を持っていてほしい、その証しがほしい、そんなことを考えていた自分に気がつくのですね。

ここでヨンヒはようやく、精神的に自立したのかもしれません。

最後に立ち上がり、心もとない歩き方で去っていきますが、夢の中で自分を満たしてくれたものが、本当は実在しなかったと知り、そこからようやく先に進めるのだ…という風に見えました。

二人が別れることによって、これほど苦しむのだ。これが本物の愛、つまり我々は別れない、ということが言いたいのかな? と感じたり、どうしても詮索してしまいます。

日常的な何気ない会話の中に、示唆的であったり、印象に残るキラリとした台詞があったり、仕掛けも多く、本当に油断のできない監督です。

喪失感と再生、また善悪ではかれない本物の愛というものをこの映画から感じました。

この二人、やはり許容できない…遠のく和解。

キム・ミニが出ていなかったらホン・サンス監督作品を楽しめるのか? という疑問を解消するために、近々『WALK UP』を鑑賞してみようと思います。

お前には関係ないだろ、と言われるでしょうが、このままそれぞれ別の仕事をしてほしいと思う私です。