行方不明になった子どもを探す母親を描いた作品で、苦しい内容です。
観るのを少しためらいましたが、挑戦しました。
目次
沙織里の娘・美羽が突然いなくなった。懸命な捜索も虚しく3カ月が過ぎ、沙織里は世間の関心が薄れていくことに焦りを感じていた。夫の豊とは事件に対する温度差からケンカが絶えず、唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々。そんな中、沙織里が娘の失踪時にアイドルのライブに行っていたことが知られ、ネット上で育児放棄だと誹謗中傷の標的になってしまう。世間の好奇の目にさらされ続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じるように。一方、砂田は視聴率獲得を狙う局上層部の意向により、沙織里や彼女の弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材を命じられてしまう。
2024年製作/119分/G/日本
『映画.com』より引用
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2024年5月17日
皆さん言われていることですが、石原さとみさんの鬼気迫る演技が素晴らしかったです。
もしかするとやり過ぎのように見える方もいるかもしれません。
ただ、子どもが行方不明になった母親の心境は、おそらく尋常ではないはずで、私には過剰に見えませんでした。
沙緒里はSNSなどで心無い誹謗中傷を受け、何重にも痛手を受けます。
お母さんが気丈に取材に応じて、情報提供を求めていたという点で、山梨キャンプ場女児失踪事件を想起させる内容でした。
私はこの報道も辛くて当時あまり見ることができませんでした。
このお子さんのご家族が映画をご覧になったら、さらに傷つかないか気になります。
私だったら、嫌かな…と思うのです。
お子さんが亡くなっていることが分かり、その後はおそらく静かに過ごしていきたいと感じておられるのではないでしょうか。
偏向報道やSNSでの匿名発言のあり方に警鐘をならすという意味では、価値のあることだと思いますが、一方で非常にデリケートな部分を抱えているのではないかとも感じます。
この映画では、2年の時が過ぎても子どもは見つからないまま終わります。
2年後、行方不明当時のような、取り乱した沙織里の姿はありませんが、キービジュアルを見て「光なんてあるか」と言いたかったです。
我が子がいないという日常に慣れていく、慣れていかなくてはいけない側面はありますが、ずっと苦しいに違いありません。
子どもが無事見つかる以外に救いはないように思います。
ちなみに、映画の中で、少し面白く見せようとしているシーンがいくつかありましたが、笑いのセンスが違うのか、一切面白くなく、クスリともできなくて「ふざけるな」と思ってしまいました。
やはり、題材がシリアス過ぎるのです。
何も面白くない、ただただしんどいだけ、過剰ではなくあれくらい母親がおかしくなっても仕方ない、無事に見つかる以外に希望なし、といったところ。
キャストについて、中村倫也さんが報道のあり方について逡巡するテレビマンを好演していたのは良かったです。
ただ、沙緒里の弟、圭吾の演出については、最後に「美羽とのほのぼのとしたやりとりの動画」を流したのが、ちょっと後出しっぽいかな?と感じました。
最初は挙動不審、いかにも世間から疑われそうに見せておいて「実は美羽ちゃんと仲良しの、いいおじさんだった」というのは、テレビの偏向報道と同じなのでは?と感じたのです。
美羽にとってやさしいおじさんだったら始めから一貫してそう描いた方が良かったのではないでしょうか。
映画そのものの信頼度に関わると思いました。
そんなわけで、いろいろと気になるところはありましたが、とにかく石原さとみさんの演技が良かったので、観てよかったです。
ターニングポイントになる作品かもしれませんね。
心をなくすというか、心があるからこそ、こうなってしまうのではないでしょうかね。