【Prime Video】『フルメタル・ジャケット』(1987)映画感想文・早く見ておけば良かった!

戦争ものは苦手で、これまであまり見ていませんでした。

スタンリー・キューブリックは好きで、なぜか急に見る気になったので「今がその時!」と思い鑑賞しました。

壮絶なリアリティで、とても面白かったです。

↑ 最後だけなぜか記憶がある

あらすじ

米海兵隊の新兵たちはいじめ、侮辱が横行する環境下、過酷な訓練を強いられる。人を殺すことを教え込まれ、人間性が奪われていった新兵のひとり、レナードはついに精神を病み自殺してしまう。その後、それぞれベトナムへ送り込まれた新兵たちだったが……。戦火のシーンではスローモーション技術を駆使し、兵士の死をリアルに描いている。

1987年製作/116分/アメリカ
原題:Full Metal Jacket
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:1987年3月

感想(ネタバレ含む)

海軍訓練所における鬼軍曹ハートマンのシゴキパートと、新兵たちがそこを出てベトナムへ赴任してからのパートに分かれています。

2部制、もしくはベトナム赴任ののち最前線に送られるパートを含めて3部制ともいえますが、明確に分けられていないので、頭の切り替えが少し難しかったです。

「第一部」「第二部」と銘打ってくれた方がわかりやすかったかな…と思いましたが、スタンリー・キューブリックに親切さを求めるのがそもそも間違いでしょうか。『2001年宇宙の旅』なんてわかりやすさ皆無ですからね。

とにかくまぁ、前半のハートマンの醜悪な罵詈雑言が、強烈なインパクトです。

あまりに長くてしつこいため、キューブリックってちょっと頭がおかしいんじゃないかと思いましたが、これには理由があったのだと後から気づきました。

「人格を否定する執拗な罵倒で、人間性を崩壊させ、戦場での殺人マシンに仕立て上げる」

「それに耐えられなかった者はレナードのように脱落し、残った者は洗脳され、敵を殺したいという欲求に囚われていく」

そこを描くために必要なシーンだったのです。

良し悪しは関係なく、狂気が徹底的に描かれているのがすごいところです。

恐ろしいと感じているのはあくまでも見ている側の解釈であり、キューブリックは「人とはこのように教育されて、戦争に順応する人間にさせられていくのだ」と徹底的なリアリティをもって見せていきます。

実践となる後半に圧倒的な説得力を持たせるための、前半部分だったと感じます。

戦場での殺人マシンとなった兵士たちが、瀕死のベトコン少女に銃を向けるラストシーン。

一瞬のためらいの中に、捨てきれていなかった人間性の断片が垣間見えました。

やりきれなさをミッキー・マウス・マーチで振り払うかのように、行進を続ける彼ら。

殺人が日常となる戦争の姿に、やりきれない思いがしました。

過激な暴力性に嫌悪感を覚える方も多いキューブリック作品ですが、安易な反戦映画に流れず、戦争のありようをそのまま描き出そうとする姿勢に、誠実さを感じました。

やはり私の中では偉大な映画監督です。

未見の作品がまだあるので、追っていこうと思います。