『ミステリと言う言う勿れ』感想文・面白かったけど汐路には魅力を感じず

テレビドラマを全く見ないまま、初めて観るという冒険でしたが、すごく面白かったです。

ドラマを見ていなかったのは、台詞がお説教っぽいイメージがあったから。

ただ、ずいぶん早くから映画館で予告をやっていて、何度も見るうちに耐性がついたのか「菅田将暉なら大丈夫かも…」と思えてきたのです。

結果、大丈夫どころか娯楽映画としてかなり楽しめました。この癖の強い役を自然体でこなす菅田将暉って、本当にすごいポテンシャルだと感心しました。

ストーリーとしては、前半の「汐路の小細工」が暴かれるところで一区切りし、後半の本筋へと移っていくわけですが、SNSを見ていると、汐路がもてはやされているようで、そこが意外に感じました。

いとこを殺そうとしてたのに…何故いとこ達は汐路をすぐに許して、何事もなかったかのように振る舞えるのかが謎でした。母親も整くんにしつけを投げずに、もう少しきちんと叱った方がいいのでは。

やけに気が強くて強引な子でもあり、あまり魅力的には感じませんでした。原菜乃華ちゃんは悪くないのですが、役どころとして難しかったのかもしれません。

同情できる立場にあったにもかかわらず汐路に共感できなかったのは「この子、元は計算高くて腹黒いよね…」というひっかかりがずっとあったからです。

そこが一番の残念なポイントでした。面白い面白いと言いながら文句ばかりで申し訳ないのですが。

「鬼の集い」の話はおどろおどろしくて、横溝正史原作の映画を彷彿とさせるところもあり、少し懐かしいような良さを感じましたし、親たちの子ども世代への思いが終盤浮き彫りになって、それもいい話でした。

またキャストが豪華で、あっちを見てもこっちを見てもスター俳優というのが見どころとして大きかったです。松坂慶子が脇役なので、途中まで松坂慶子が全てを知る人物だと私は疑っていました。

後から思い出すと少し変な部分もありましたが(車の爆発シーンを何度もこすり過ぎるとか)、それを差し引いても内容盛りだくさんで、見ごたえたっぷりでした。2時間以上あっても、中だるみなしで飽きない展開だったのも良かったです。

この映画を観て、ミステリと言う勿れのテレビシリーズよりも、八つ墓村とか犬神家の一族を見直したい気持ちになりました。久能整は金田一耕助をベースにして作られているのかもしれないですね。

最後に、今作で映画についての大きな気づきがありました。

それは「面白い=好き」とは限らないということです。「泣いた=良かった」とも限りませんし「寝てしまった=つまらなかった」でもないのです。

人の感情というものは本当に複雑なものです。