ほりもぐ@映画の感想文 
鑑賞後数日経ち、印象に残っている映像は首ばかり。これでいいのだろうか…と考えました。
作品情報
監督・脚本
北野武
キャスト
ビートたけし(羽柴秀吉)
西島秀俊(明智光秀)
加瀬亮(織田信長)
中村獅童(難波茂助)
木村祐一(曽呂利新左衛門)
遠藤憲一(荒木村重)
勝村政信(斎藤利三)
寺島進(般若の左兵衛)
桐谷健太(服部半蔵)
浅野忠信(黒田官兵衛)
大森南朋(羽柴秀長)
2023年製作／131分／R15+／日本
配給：東宝、KADOKAWA
劇場公開日：2023年11月23日
結末あり感想
面白いか面白くないかでいえば、たしかに面白い。しかし残酷な場面ばかり頭に残ってなんとなく後味が悪く「良かった、気に入った」とは言えない、どうも複雑な気持ちです。
まず、権力争いがあり、男性同士の愛憎劇があり、首を穫ることへの執着を見せつけられます。
最後には秀吉(たけし)が「首なんかどうでもいい」と明智光秀の首を足蹴にするという、強烈な皮肉で幕を閉じるのですが、つまりそこに着地させるために、ここまでの物語があったのかと理解しました。
さんざんいろいろあっても、結局は「命とはその時が来れば実にあっけなく失うもの」という北野監督の死生観が垣間見えるようでした。
日本史における大きな事件「本能寺の変」の独自の解釈もあり、虚実入り乱れ、そのように描いたのか、と意表をつく展開も(特に重要な場面で)ありました。
また、生き死にの血なまぐさいせめぎ合いと、たけしを含む三ばか大将とも言える笑いとの緩急も計算されていて、重苦しいだけではなく、飽きることなく最後まで楽しめました。
衆道と呼ばれる男色の世界も生々しく描かれていました。ただ、内容としては微妙と言わざるをえません。
私はBLでもLGBTQを扱った映画でも何でもよく見ますが、今回の遠藤憲一は、ちょっと気持ち悪くて、まったく刺さりませんでした。森蘭丸もイメージとちょっと合わなかったし、個人的に違和感がありました。
何かが違う…上手く言えませんが、BLというのも違うと思うし、何かイライラさせられるものがありました。
明智光秀が信長に告白して、切り抜けたというのも、展開としてちょっと解せないです。信長の地位と権力があれば、光秀を手籠めにするなど容易だと思うのです。
信長が片思いしていたような設定は変な気もしました。
思うに、違和感というのが監督の狙いなのかもしれません。私は他にも、「木村祐一の重要な割に微妙な演技」とか「加瀬亮の過剰なクレイジーさ」とか「中村獅童が張り切りすぎ」などに、居心地の悪さや違和感を覚えました。
西島秀俊だけがなんだか通常運転で、少し浮いているように見えたのが面白かったのと、私個人としては、数少ない女性出演者、柴田理恵のシーンが一番面白かったです。
争いを重ね権力で成り上がっていく物語は『ナポレオン』とも共通しますが、そこに魔力のようなものがあるのかと、私などは不思議な気持ちになるばかりです。
これまで、バイオレンス色が強いということで北野監督の作品を避けてきましたが、もう少し映像美が感じられる作品を作られるのかと思っていたので、少し想像と違いました。
配信で過去作品を見られたらいいのですが、北野武監督の配信はないですし、テレビでも放送できないないようなので、見る機会がなく残念です。
Dollsなど、なんとかして見てみたいなぁと思います。
