『ナポレオン』映画感想文・英雄的要素が少ないかも…

8000人のエキストラと11台のカメラを駆使した会戦シーンは迫力満点です。すごい、でもこれは戦争、多くの兵士が殺し合いをしている場面だと考えると、複雑な気持ちになりますね。

基本情報

監督

リドリー・スコット

キャスト

ホアキン・フェニックス(ナポレオン)

ヴァネッサ・カービー(ジョゼフィーヌ)

製作国 アメリカ

上映時間 158分

1789年 自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り 皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン。最愛の妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係の中で、フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって、ヨーロッパ大陸を勢力下に収めていくが――。フランスを<守る>ための戦いが、いつしか侵略、そして<征服>へと向かっていく。

『ナポレオン』公式HPより

感想

ナポレオンの度重なる戦争と、妻ジョゼフィーヌとの愛憎劇が映画の二大テーマとなっています。そのうち愛憎劇について、それぞれの考え方や関係性が少し分かりにくいと感じました。

映画を見る時に、まず登場人物がどう考えているか「理解」し「許容や共感」ができれば深く味わえるのですが、まず理解するにも、この映画だけでは情報が足りないのです。

特に、ジョゼフィーヌ側のナポレオンに対する気持ちは、どちらかというと生活のための妥協、形だけの愛ではなかったのか、と感じ取れます。

夫が戦争に出かける中での浮気や、手紙の返事をよこさないなど、愛情があったとすれば、彼女の行動には理解しがたいものがあり「感謝はすれども愛情なし」といったところかなと見ました。

実際には、結婚生活を送るうちに関係性が変化していった、というのが正しいのかもしれませんが、それもちょっと分かりづらく、何がどうなって離婚後に友情が芽生えたのかが不可解でした。

リドリー・スコットがこの2人の複雑な関係性を完全に描ききっていないようで、物足りない部分でした。

ホアキン・フェニックスの演技はある種の気持ち悪さも含めて素晴らしく、怪演の粋に達していましたし、ヴァネッサ・カービーも美しくてたいへん魅力的でした。

衣装や美術もたいへん見ごたえがあり、こだわりを感じます。ナポレオンもジョゼフィーヌも地位が上がるごとに衣装も豪華になっていき、特にジョゼフィーヌのドレス姿の美しさには魅了されました。全て手作りという贅沢な衣装も見どころのひとつです。

2時間半強という長めの作品でしたが、中だるみもなく、夫婦関係と戦争で緩急がつけられ、飽きずに最後まで楽しめました。

今回の映画は半分近くカットされたもので、本当はあと2時間あるということ。それをみたら腑に落ちるのかもしれませんが、さすがに長過ぎるのと、ディズニープラスに入っていないので多分見ないと思います。

戦争よりもナポレオンという人間の葛藤や愛憎の方が興味深いので、配信後にはどなたかのレビユーを参考にさせていただきます。

史実との違い云々もありますし、この映画で「ナポレオン素敵」とはならないと思うので、その辺りはご了承の上、ご覧いただきたい映画です。