『フラッグ・デイ 父を想う日』変われない父親と愛したい娘

これは父と娘の、かなり切ない関係を描いた作品でした。主演はショーン・ペンと実の娘ディラン・ペン。ショーン・ペンはマドンナと結婚していましたが、その後のロビン・ライトとの結婚で生まれた娘さんです。知らずに見たのですが、揺れ動く娘の心情を繊細に表現していました。弟も実の息子だそうです。女性ジャーナリストの実話に基づいたお話です。

(あらすじ)アメリカ最大級の偽札事件の犯人ジョン(ショーン・ペン)は裁判を前に逃走する。娘ジェニファー(ディラン・ペン)は警察での取り調べで父親について語り始める・・・子ども時代からの回想。

公式サイトのあらすじや、広告の文字「それでも、この愛は消えない」を見ると、ジェニファーは一心に父親のことを愛し続けていたように見えますが、決してそうではなく非常に揺らぎ、苦しんでいます。それこそがこの映画のテーマと言えるでしょう。

自分は国旗制定記念日に生まれた特別な存在とし、地道に働くことを恥じるように、ひと山当てて成功者になることばかり考える父親のジョン。しかし子どもたちにとっては、大人の事情など関係はなく、最高の楽しさ、刺激をくれる父親として存在していました。

子どもの頃はそれで良かったとしても、成長するにしたがって、そんな放蕩を繰り返す父親の姿は失望に変わっていきます。変わらずに父を愛したいという娘の気持ちと、変わりたくても変われない父親。ジェニファーは犯罪に手を染めた父親を拒絶しながらも、心のどこかで強く求めているからこそ、葛藤するのです。

求めては裏切られ、受け入れては失望し、最後に残ったのは愛情なのか何なのか。これは人によって見方が異なるかもしれませんが、私は愛情と一言では言えない、悲しみも入り混じる複雑なものと捉えました。

愛したのは二度と戻らない過去であり、ヒーローだった頃の父親。実は嘘を重ね、犯罪に手を染める父親であったという悲しみ。さまざまな感情が混ざりあい、それもまた親子の形であると最終的に受け入れていくしかない。そんなジェニファーの複雑な心が感じられ、共感しました。

いや本当に…父親しっかりしてくれよ! と正直思いました。今は実在する主人公のジャーナリストの方も穏やかに暮らしておられるそうで、良かったです。あまりお正月向きではないかもしれませんが、しみじみしたい方におすすめの映画ですね!