『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』映画感想文・ミアは悪役!?

双子ユーチューバー製作のA24作品、ホラーです。怖さがありましたし、あからさまな驚かせ(ジャンプスケア)もあまりなく好感が持てました。

キャストに有名な俳優を起用せず、低予算と思われますが、いいホラーに仕上がっていたと思います!

監督・キャスト

監督

ダニー・フィリッポウ

マイケル・フィリッポウ

キャスト

ソフィー・ワイルド(ミア、主人公、二年前に母親を亡くしている。キービジュアルの少女)

アレクサンドラ・ジェンセン(ジェイド、ミアの親友)

ジョー・バード(ライリー、ジェイドの弟、重要人物)

オーティス・ダンジ(ダニエル、ジェイドのボーイフレンドでありミアの元彼)

2022年製作/95分/PG12/オーストラリア
原題:Talk to Me
配給:ギャガ
劇場公開日:2023年12月22日

あらすじ

二年前の母親の死が、まだ受け入れられずにいる高校生のミア。父親とも心が通わず、親友ジェイドの家に入り浸っている。

そんな中、SNSで話題の「90秒憑依チャレンジ」に好奇心から参加する。憑依チャレンジは「エンバーミングされた手のオブジェを握る」「トーク・トゥ・ミーと唱えると霊が見え、憑依される」「その手は90秒以内に離さなければならない」というルール。

チャレンジへの称賛、スリルと快楽にのめり込むミア。しかし、親友の弟ライリーがチャレンジした時、憑依したのはなんとミアの母親だった。

ネタバレあり感想

ここでの霊はドラッグ的要素が強そうでした。憑依された人間は自分ではない何者かに支配され、恍惚の表情を浮かべます。

ミアが率先してチャレンジし、傾倒していったのは、心に大きな隙間があったからです。

ドラッグに手を出し、依存していく若者と同じように見えました。その先にあるのは自滅というところまで似ています。

そのミア、本質的にはいい子なのですが、言動をよく見ていると承認欲求が強く、身勝手な部分がかなりあるようでした。

親友の家に入り浸り、親友と彼氏との間に割り込み、認められたいがために降霊術に名乗りをあげ、ルールを破り…とやりたい放題で、共感はしにくい存在として描かれています。

ミアが憑依から逃れられなかったのも、そもそも90秒ルールを破ったからですし、ライリーに母親が憑依したことを知ると、引き伸ばして大変なことになりました。これは縁を切られてもしょうがない。

自己中心的な自分に気がついていないため、「そんなつもりではない」と訴えても説得力を持ちません。

親友一家の心も離れていき、ますます孤独を深めて焦るミアが、哀れにも感じます。

そこで父親との関係が改善されれば救われたのかもしれませんが、そこはルールを破って憑依が続いているミアです。

悪霊に侵食されていて、父親の善意の言葉も信じられなくなっています。

哀れなミアなのですが、その上父親を刺し、ライリーを病室から連れ出して殺そうとするのですから、同情の余地はありません。

自分の撒いた種とはいえ、転落の一途をたどるのが本当に恐ろしいです。

ラストですが、一瞬のことで、どうなったのか分からない方もおられるのではないでしょうか。

ミアが「間違って」ライリーの代わりに転落したと解釈する人もいるようです。

しかし私は、車椅子のライリーを突き落とそうとした瞬間に、ミアが素に戻り、かばって自分が転落死したように見えました。

これまで自己中だったミアが、最後の最後に、自己犠牲によってライリーを救った、と見てはどうでしょうか。

良心を発揮した瞬間に命を落とすという皮肉が効いていて、バッドエンドではありますが、まぁ彼女はこれまでがこれまでだからね…といういい塩梅のバランス感があり、私としては納得でした。

霊になったミアは生身の人間とはもう交流できません。ハサミで刺されたはずのお父さんは助かったようですが声は届かず、ライリーが家族に囲まれて退院した様子も眺めるだけです。

憑依は時間が経つごとに解けていくという、ある意味都合のいい設定で、何の非もないライリーが元気になったのは本当に良かったです。一番大変な目にあったのは彼ですからね…。

もしかするとミアが素に戻ったのは憑依が解ける瞬間だったのかもしれません。しかし時すでに遅しで、ラストショット。

ミアは「トーク・トゥ・ミー」と言われる側に回るのです。こっわ〜〜!

アメリカでは大ヒットということで、続編が決定していて、期待が持てます。楽しみに待ちたいと思います。