「怪作でも一周回って見たいと思っていただけるような感想にしたい…」それがほりもぐの願い。
内容に触れますのでご注意くださいませ。
(あらすじ)夫婦間のトラブルから夫の死を見てしまったハーパー(ジェシー・バックリー)。自責の念にさいなまれ、風光明媚なイギリスの田舎へ休暇に訪れる。カントリーハウスの管理人ジェフリー(ロリー・キニア)を始め、少年、牧師、警察官、パブの客、出会う男たちは全て同じ顔。そして廃トンネルからついてくる影に彼女は怯える。ある夜ついに事件が・・・。
ミソジニーという言葉があります。女性に対する憎悪、嫌悪、軽視ですが、相手側の男性が無意識に発している言葉でも、女性に大きなストレスを与えていることがあります。
無意識だからこそタチが悪いと言えますが、そのような「同じ顔の男たち」が、ハーパーをじわじわと追い詰めていきます。警官や司祭でも同じなのかという失望感。そしてミソジニーの具現化した姿が、廃トンネルからついてきた全裸男だったのかな? と解釈できます。
ただ、肝心の同じ顔の男たちが、同じに見えなかったという…。キャストの演じ分け、メイクが巧みなため、同じ顔と認識できなかったのです。一緒に見た3人とも「同じ顔って内面的比喩的なことなんだね〜」と思っていました。帰宅後にネットで確認してようやく「同じ人だったよ!」「えー?」という有様。そういえばハーパー自身も「同じ顔だ」と驚く場面はなく、わかりにくくした製作者の意図が少しつかめず。ダイレクトに同じ顔にした方が不気味さが増して良かったかもしれません。
前半とても美しい景色、素敵なカントリーハウスを堪能できますが、終盤は大きくホラー(グロ)展開。監督が「進撃の巨人」に影響を受け(てしまっ)たらしく、こういう巨人いたいた! というビジュアルの男たちが単為生殖でマトリョーシカのように生まれていくという修羅場を迎えます。
ハーパーは夫の行動に恐怖し、亡くなったことへも責任を感じてフラッシュバックに苦しんでいましたが、男たちからの抑圧に立ち向かううち次第に強くなり、恐怖の表情から哀れみとも取れるような表情に変わっていったのが印象的でした。
男たちが産みの苦しみを体感していくさまを見ながら思ったことは、「数秒で妊娠から出産できたら楽だよな!」「生まれるたびに母体が死んでるじゃん!」「とことん馬鹿にしてくるなぁ」というものでした。見ているこちらもモヤモヤしましたが、ハーパーも「なんやこいつら…」みたいな顔をしていて、私の最大の共感どころでした。
直接的な場面はありませんでしたが、最終形態の元夫を自分の手で抹殺して終わったのだと思います。恐怖を与えていた自覚もなく「愛」がほしかったと彼が語る身勝手さ。これでハーパーもふっきれたのでしょう。そもそもその辺りが夫婦間の問題だったんでしょうね。
ひとことで言うと珍妙な作品でしたが、勇気のある方はぜひ挑戦してみてください。ただしグロテスクなものが苦手な方は少し注意ですよ!