先日『読書脳』を読んでから、かなり本を読めるようになってきました。今回はまだ感想を書いていなかった『父滅の刃』です。
樺沢紫苑先生のご著書の中でも、少し特殊、というかマニアック。興味深い1冊でした。
映画は時代を映す鏡。この本では、映画史において父性がどのように変化してきたかが、具体的に解説されています。
膨大な数の作品を例に挙げて、父性、父性的なものが弱まり、いまや消滅しかけているのではないかと問題提起されており、考えさせられます。
私は映画を父性という観点で観たことがありませんでした。そのため、映画にこのような見方があったのか! と驚くばかりでした。
(帯より)こんなにたくさんの映画!
父性とは…
「規範、ルール、ビジョンを示し、社会での生き方を示すもの」倫理、道徳、厳しさ、強さ…そんなイメージです。
ちなみに母性は「子どもの欲求を受け止め、満たし、包み込む」やさしさ、保護、受容を意味します。
成長過程で心理的に父親と格闘し、乗り越えることを「父親殺し」と表現しますが、誰もが殺すにふさわしい?父親を持っているかといえばそうでもありません。
特に最近は優しい優しいお父さんが増えていて、叱られたことがないまま社会に出ていく子どもさんも多いのではないでしょうか。また、父親不在の家庭もたくさんあります。
私も早くに父親を亡くしているので、接したのは小学生くらいまで。今から思うと、父性的なものが足りず、なんとなく不安定な気持ちになっていました。
世の中を見渡してみても、倫理観や道徳心が失われつつあり、不安感や自信のなさにつながっているような気がします。父性の喪失がそうさせているのかもしれません。
ただ父親からでなくても、父性的なものを補うことができ、自分も身につけることができると書いてあり、とても参考になりました。
ヒントは「和解する・自己成長する・子どもと対峙・メンターの存在・職場において」です。
メンターといえば樺沢先生の名前を挙げられる方が多くいらっしゃいます。先生も父性的で、柱のような存在感があります。講演会やセミナーなどで会いに行けるところも理想的です。
私も、樺沢先生をはじめ、いろいろな分野に尊敬する方がいますが、そうやって「メンター」として意識するだけで、自分の心の安定に繋がっている気がします。
これが父性の補充なのかもしれません。
ひとりの人間に父性と母性が備わっている
母親は母性だけ、父親は父性だけを担っているような気がしていたため、自分の中にも父性の要素があるのか、という気づきがありました。
当然、人によってその度合は違っています。例として映画『ファイトクラブ』が挙げられていました。気力の乏しい主人公は父性的なものに強く憧れ、やがて過剰で暴力的な人物に変わっていき、ある時点で「父親殺し」が行われ(乗り越え)、母性も兼ね備えた調和の取れた人物へ変わっていく…。
なるほど、そう言われてみると、その通りです。殴り合ってなんだか暴力的な映画だなぁと思っていましたが、そのような読み取り方があるのかと、腑に落ちてスッキリしました。
この映画のラストは悲しいものでしたが(と私は解釈)、自分自身も父性と母性の均衡が取れている人物を目指したいと考えくました。
父性的な部分が足りない私には、「厳しいのも愛情」というのが難しく、子どもに対してストレスを与えない子育てをしてしまった反省があったため、大変勉強になりました。
まとめ
この中で三分の一くらいは観ていない映画の話でしたが、それでもすごく楽しめました。
特に気になった何本かは配信で観たり、見直したり。『エクソシスト』なども解説がとても面白く、3回目くらいになりますが、9月にリバイバル上映されるのでスクリーンで見ようと思っています。
ホラー映画の金字塔が「精緻な人物描写」と言われると、そうだったっけ? と、気になって仕方ありません。見直すのが楽しみです。
また、『アナと雪の女王』『アラジン』における父性の見解は、ディズニー映画にも忖度なしの裏しおんちゃん炸裂(←帯に書いてあります)。
実は私もアナ雪にはなんとなくモヤモヤしていたのですが、理由が分かりました。
娘いわく「ディズニーは世間を調べ上げてああいうのを作っているんだよ」というのですが、意図的に父性をぶっ壊しているのかと思うと、その目的はなんなのか、背筋が凍りそうです。
そんな感じで、話は尽きませんが、映画好きな方はもちろん、とくに子育て中のお父さんにはぜひ読んでみてほしい本です。
「優しいパパ」はもちろん素敵ですが、一方で子どもってわりと厳しさや強さも親に求めているのですよね。 いや〜親というものは難しい!
それでは、また。