ネットフリックスにて鑑賞。スティーブン・スピルバーグはこれまで特に好きではなかったのですが、今年公開された自伝的映画『フェイブルマンズ』を観て、すごく腑に落ちた感があり、未見のものを見るようになりました。
レオナルド・ディカプリオは当時28歳で16、7歳の天才詐欺師の役。少し年長に見えてしまうのは仕方ありませんが、まーカッコいいこと! こんな詐欺師、目立ってしょうがない。
パイロット詐欺って今でもあります。Xでフォローしてきたある人など、写真が合成で絶対ウソなのですが、もしディカプリオだったら…騙されない自信がありません。
『タイタニック』の5年後の作品で、比べてみるとこちらの方がイキイキと輝いて私には見えました。
さまざまな皮肉が散りばめられている
一度観てから冒頭部分を見返すと、なるほどこれがあれにつながっているのか…と思えるシーンが多くありました。
主人公フランク(ディカプリオ)は父親をリスペクトしており、認められたいと常に思っていて、父親の言動を真似します。
ネックレスで女性の気を引き、最後までもがくネズミが助かるというスピーチを持ちネタとし、自分をよく見せるために人を欺きます。
権力(国税局)を苦々しく思い、倫理観がやや低い、しかしそんな父親を羨望の眼差しで見つめるフランク。
父親の背中を見て、立派な詐欺師となったフランクでしたが、意外にも父親は認めてくれません。息子ほどの悪党でもなく、地道に仕事のできる人物だったのです。
フランクは父親の社会通念上好ましくない面を尊敬の対象としていたのでしょう。
お金さえあれば…始めはそのように思っていたかもしれませんが、偽りの人生の虚しさに気づいていく若者。しかしまともな人生を送るにはあまりにも罪を重ねすぎていた。そんな皮肉が終盤まで続きます。
また!? 母が父の友人と不倫のパターン
両親があっさり離婚してしまうという、自分の話がまた出てきました。私が見たスピルバーグの作品はたいてい両親が別れています。よほど、自身の経験が尾を引いているのでしょう。
スピルバーグがフランクに自分を投影しているところも多々あるようです。
父親から誕生日に小切手帳をプレゼントされたフランクですが、スピルバーグも実際8ミリ映写機をプレゼントされており、その後の人生に父親が大きな影響を与えていることを示唆しています。
母親への思慕の情がたっぷり描かれていることも、きっと深い思いがあるのでしょうね。
能力は人の役に立つことに使う
認められたいと願っていた父親を失い、母親も新しい家族と幸せに暮らしている。フランクの願いは叶わず、失意の中、彼を救ったのがFBI捜査官のカール(トム・ハンクス)です。
まだ若いフランクが、カールに父性を感じ、人の役に立つ道へと導かれていくところが良かったです。
彼に道徳心や倫理観という新たな価値観を与え、頭の良さを世の中の役に立てるように道筋をつけたカールの懐の広さに感動しました。
あと、彼を信じるところです。フランクは何度もカールを騙しますが、カールはフランクを騙しません。そうやって、身をもって人を信じることを教えたのです。
なぜひとりの犯罪者にそこまでできるのかというと、毎年のクリスマスの交流で、カールはフランクの孤独を見抜いていたからだと思います。
この洞察力の深さ…そしてトム・ハンクスの演技の安定感に父性を感じました。
まとめ
フランクの見事な機転、頭の良さに権力(FBI)が翻弄される痛快さ。
一方で偽りの人生を続けるフランクの孤独。
単なる捕物ではなく、詐欺犯罪の中に人間本来の良心を見い出して、年長者が導いていくところ。
とてもいい映画でした。実話だというのがすごいですね! 今の時代ではとても無理、と思えるところも面白かったです。