『バットマン』(1989) 感想文・ジョーカーが可愛すぎる

本作で演じたマイケル・キートンが30年ぶりにバットマンを再演する『ザ・フラッシュ』(公開日2023年6月16日)。

今年はバットマンシリーズの主要作を見るという目標があり、予習としてティム・バートン版バットマンから鑑賞していきます。

それまでにも3作あります。

  • 『連続活劇バットマン』(1943年)
  • 『バットマン&ロビン』(1949年)
  • 『バットマン オリジナル・ムービー』(1966年)

しかし、年代が古いので保留。好き勝手に見ていきます。

  • 『バットマン』(1989)
  • 『バットマン リターンズ』(1992)
  • 『バットマン フォーエヴァー』(1995)
  • 『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』(1997)
  • 『バットマン ビギンズ』(2005)
  • 『ダークナイト』(2008)
  • 『ダークナイト ライジング』(2012)

とりあえず、ティム・バートンの世界観は好きなので先に見て、そこからクリストファー・ノーラン監督によるダークナイト三部作を見ます。『ダークナイト』は評価も高く、見たはずなのですが、思い出せない(!)ので、もう一度見ましょう。

  • 『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)
  • 『ジャスティス・リーグ』(2017)
  • 『THE BATMAN – ザ・バットマン – 』(2022)

上の2作は必要ないかな…という気も(タイトルから)します。

2022年の『THE BATMAN』は視聴済み↓

前置きが長くなりましたが『バットマン』の話。

ティム・バートンらしい、ダークファンタジー要素の強い作品です。

異形への愛があふれるあまり、ジョーカーに力を入れ過ぎて、肝心のバットマンが手薄になっている感すらあります。

そのせいか、見終わっても頭に浮かぶのはジョーカーの顔ばかり。

薬品の廃液に落ち、白く引きつった笑顔となったジョーカーは、発狂し、バットマンを逆恨みします。ジャック・ニコルソン演じるジョーカーが奇っ怪で、強烈なインパクトです。

笑いながら人を殺す狂気と、滑稽さが混じり合い、憎むべき悪役というより、闇落ちした哀れな男に見えました。どこか可愛いと感じてしまうのです。

名画をペンキで汚してはしゃぐジョーカー、白い顔を肌の色に塗るジョーカー、パレードの山車からお金をバラまいてはしゃぐジョーカー…狂っているのですが、憎めない可愛さがあります。

私が最もツボだったのは、バットマンの恋人であったヴィッキー・ベール(キム・ベイシンガー)を気に入り、無理やりダンスを踊るシーン。

ヴィッキーには当然嫌悪されていますし、ジョーカーはそのことを百も承知なのですが、ヴィッキーの策略により、すてきな人…と誘惑されます。急にそんなことしたって、嘘に決まってるやーん、です。

ところがジョーカーは一瞬ハッとして、ひるんでしまいます。その時の表情! もしかして好きになってもらえたのかも! という素の表情をさらしてしまうジョーカー。

哀れにもほどがあり、非常に萌えポイントでした。ちなみに、隙を見せたせいで、その後やられてしまいます。

ラストも秀逸、転落死したジョーカーの懐から「笑い袋」が出てきて、気味悪く声を上げるのです。これは一体何を示唆しているのか、考えさせられます。

・もし死んだとしても(あるいはその覚悟があったのか?)なお、人々をあざ笑ってやるという、とことんねじ曲がった根性であり異常性。

・反対に、本当は「笑えない」心も持ち合わせていたからこそ、いつでも笑い声で人を恐怖に陥れてやろうと隠し持っていた。人間らしさや悲しさ。

どう解釈しようか迷う、興味深いラストシーンです。

そうそう、バットマンが地味だったので、触れるのをつい忘れてしまいました。

ジョーカーが狂気の愉快犯であるのと対象的に、バットマンはとても暗く陰鬱なイメージです。

基盤には、子供時代に目の前で両親を殺されたという出来事があり、内に秘めた憎しみがエネルギーとなっています。

バットマンもかなりおかしいのです。夜な夜なコウモリの扮装をしてチンピラどもをボコボコにして回っているという異常性。

いくら資産家で慈善事業をしていたとしても、個人の裁量でやることではありません。これが善かといえば、決してそうではないのです。

コウモリのごとく夜は思うがままに活動し、昼間は善人として生きる二面性。彼もまた闇が深いのです。

正義の味方が悪者をやっつけて爽快感を得るような作品を思い描いていると、とてつもなく混乱する作品です。

次の『バットマン・リターンズ』はさらにそれが顕著になっていき、本当に面白い。

随所に時代を感じますが、それはそれとして、低予算で、CGのない時代にもかかわらず、美術が素晴らしく、ティム・バートンの変態ぶりが堪能できる、とてもいい作品でした。

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