『DOGMAN ドッグマン』映画感想文・こんな設定ありなの…と涙

過酷過ぎる半生に衝撃を受け、主演ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技に泣かされました。

とても分かりやすくて、漫画が原作のようですが、リュック・ベッソンの脚本です。

映画内リアルに引き込む力を感じました。

あらすじ

ある夜、1台のトラックが警察に止められる。運転席には負傷した女装男性がおり、荷台には十数匹の犬が乗せられていた。「ドッグマン」と呼ばれるその男は、自らの半生について語り始める。犬小屋に入れられ、暴力を浴びて育った少年時代。犬たちの存在に救われながら成長していく中で恋を経験し、世間になじもうとするも、人に裏切られて深く傷ついていく。犬たちの愛に何度も助けられてきた彼は、生きていくために犬たちとともに犯罪に手を染めるが、「死刑執行人」と呼ばれるギャングに目をつけられてしまう。

2023年製作/114分/PG12/フランス
原題:Dogman
配給:クロックワークス
劇場公開日:2024年3月8日

『映画.com』より引用

感想(ネタバレ含む)

壮絶な生い立ちから、犬しか信頼できない大人へと成長し、ダークヒーローとなったダグラス。

しかし、ヒーローというほどでもなく、懲らしめるのはせいぜい町のギャングだったりします。

社会など、大きな相手を狙わない(狙えない)、ダグラスの個人的な悲しみの物語であるところが良いと思いました。

『ジョーカー』を思い浮かべる場面があったり、虐待・犬・失恋・ドラァグクイーンが都合よく配置されている感はあるのですが、映画内リアリティとして確立しています。

ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの熱演によるところが大きいです。

ドラァグクイーンの職を得て車椅子から立ち上がり、エディット・ピアフのパフォーマンスをする姿は鬼気迫るものがあり、とても感動しました。

自らを束縛するもの(檻)からの解放を求め、模索し続けたダグラスが、ラストでは犬の力を借り、よろめきながら自分の足で刑務所を出ていきます。

それでどうなるのかは語られませんが、現実的には死への道でしょう。

しかしそこには彼の魂が解放されたような、カタルシスがありました。

精神科医エヴリンとの対話を経て、彼に変化があったとしか思えません。

色々な見方ができるでしょうが、私には、これまでの人生を語ることでけじめがつき、闇に堕ちる覚悟が決まったように見えました。

また、何と言っても犬たちが凄かったです。

多くの犬を集めて、演技をさせるのは難しいと思うのですが、皆賢くて可愛かったです。

物語上、ひどい目に合わなければいいが…と心配していましたが、その点は大丈夫。

ただ、主人公が指示をして、盗みをさせたり、人間を攻撃させたりしていて、それは犬の同意の上なのか?という疑問も。

ダグラスは犬の存在に救われて、犬を心から信頼しているのですが、犬の気持ちとしてどうなのか、分かりにくかったです。

ご飯をもらっているから言うことを聞くのか、過酷な環境から出してもらえたから感謝しているのか、犯罪と分かって手伝っているのか、特定の犬とだけ通じ合っているのか…犬の動きに根拠を求めてしまいました。

ダグラスは車椅子生活なので多くの犬を適切に飼うことは不可能であり、どうして犬がダグラスを信頼して言うことを聞くのか不思議でした。

心と心で通じ合っているならファンタジーとしてそれでもいいので、もう少し説明が欲しかったです。

社会問題のメタファーも何もなく、あくまでも個人的な物語で、とても気に入りました。

リュック・ベッソンはなんとなく合わない気がしていましたが、意外にも良かったので、これからも楽しみです。