去年観た『ファースト・カウ』が良かったので、ケリー・ライカート監督の作品を追っています。
主演はミシェル・ウィリアムズ。4作目の起用ということは、監督との相性が良いのでしょうね。
決して派手な作品ではありませんが、ラストが印象的でとても良かったです。
目次
美術学校で教鞭を取る彫刻家のリジーは、間近に控えた個展に向け、地下のアトリエで日々作品の制作に取り組んでいる。創作に集中したいのにままならないリジーの姿を、チャーミングな隣人や学校の自由な生徒たちとの関係とともに描いていく。
2022年製作/108分/G/アメリカ
『映画.com』より引用
原題:Showing Up
配給:U-NEXT
劇場公開日:2023年12月22日
特に何も起こらず、物語として起承転結がはっきりしているわけでもなく、ドラマを求めて見ると、つまらないかもしれません。
ただ、妙に惹かれるものを感じるケリー・ライカート監督作品。今作も良かったです。
主人公リジーは個展を前にしてスランプに陥り、余裕のない毎日。
こんな時に限ってトラブルは重なるもので、お湯が出ないとか、兄の奇行とか、飼い猫がハトを傷つけてしまうとか、製作に専念できない状態が続きます。
笑顔もなくモヤモヤしている様子が見て取れます。
大家であり隣人、友人のジョーの存在には複雑な思いがあるリジー。
芸術家として認めながらも、恵まれた環境で製作に取り組み、いつも明るく陽気な彼女に嫉妬のようなものも湧きます。
ジョー役のホン・チャウが、とてもナチュラルでのびのびとしていて、いい演技です。
『ザ・ホエール』の時も感じましたが、ちょっと昔の手塚理美に似ています。
タイプが正反対なのに友人関係、というのは意外とリアルな人間関係だと思いました。
言葉としては何も語りませんが、ジョーを間近で見ながら、焦る気持ちはよくわかりますし、芸術家としての苦悩が場面場面で伝わってきました。
また、ケイリー・ライカートの作品にはいつも動物が出てきて、主人公が優しい目線を注ぐ様子に癒やされます。
今回は、見殺しにしようとしたハトを、翌日には手当てをして預かり、病院へ連れて行くリジーの心境の変化が、とても繊細だと思いました。
羽を痛めたハトは、様々な出来事で傷ついている自分であり、小さな生き物に優しくする余裕すらない心を表しています。
最後に、リジーの個展が無事開催され、悩み事の種となっていた知人たちが集まりますが、その場で傷の癒えたハトが飛び立っていくところが象徴的でとてもいいラストでした。
リジーを困らせたり苛立たせた人たちが一緒に空を見上げて、笑顔でハトを見送ったことで、ひとつの形に丸く収まったのがとても心地よく、味わい深かったです。
ミシェル・ウィリアムズはもう40歳を過ぎていますが相変わらず可愛く、ケリー・ライカートの世界観にとてもよく合っています。
これ以前に3作品、全てミシェル・ウィリアムズが出ているので、これから観るのがとても楽しみです!
見たいものを全部見てからやめようと思っているU-NEXTが、全然やめられません…。