【U-NEXT】『ウェンディ&ルーシー』(2008)映画感想文・極貧!飼い犬ルーシーの可愛さが救い

主役のひとり、犬のルーシーはケリー・ライカート監督の愛犬で、今作により2008年のパルム・ドッグ賞を受賞しています。

『オールド・ジョイ』(2006)にも出演していた、愛嬌と存在感のあるとても可愛いワンちゃんです。

特別な訓練を積んだタレント犬でもないと思いますが、それぞれの俳優さんの本当の飼い犬のように振る舞っています。

ルーシーの存在が救い、ですが行方不明になってしまいます。

あらすじ

ウェンディは仕事を求め、愛犬ルーシーを連れて車でアラスカを目指していたが、途中のオレゴンで車が故障し足止めされてしまう。

ルーシーのドッグフードも底をつき、旅費を少しでも残しておこうと考えたウェンディはスーパーマーケットで万引きをする。

店員に見つかって警察に連行されたウェンディは、長時間の勾留の末にようやく釈放されるが、店の外に繋いでおいたルーシーの姿は消えていた。野宿を続けながら必死にルーシーを探すウェンディだったが……。

2008年製作/80分/アメリカ
原題:Wendy and Lucy
配給:グッチーズ・フリースクール、シマフィルム
劇場公開日:2021年7月17日

『映画.com』より引用

感想(ネタバレ含む)

ちょっとほろ苦い印象のある作品です。

若い頃に見ていたら、身につまされて辛かったかもしれません。

姉夫婦に電話するも、頼ることはできない事情がありそうですし、両親がいるのかいないのか、これまで何をしていたのか、その辺りも語られません。

衝動的に犬を乗せて出てきてしまったように見えます。

後戻りは考えていないことから、貧困よりも苦しい過去から逃れてきたのでしょう。

主人公ウェンディの中で大きな決断を迫られる終盤。

現実を知り、前へ進むために諦めなくてはいけないこともある、と分かっていきます。

それは車(88年製のホンダ・アコード)と愛犬のルーシー。

旅する上で最も大切なものたちでした。

多額の修理費を前にして車を諦めるのですが、それと同じように、保護され芝生を駆け回るルーシーを見て、連れて行くことを諦めます。

いい人そう…庭も広いし…と自分に言い聞かせるようにつぶやくシーンは、切なくて涙が出ました。

車とルーシーに別れを告げたウェンディは、その後どうだったでしょうか。

寂しさや心残りはもちろんあったでしょうが、私には何かふっきれたような、希望や爽やかさも少し感じられるラストと見受けました。

人生は選択の連続、出会いと別れの連続。

彼女はきっとアラスカにたどり着くでしょう。

そして、ますます年齢不詳のミシェル・ウィリアムズ。

一体何歳設定なのか全くわからないのです。

ボーイッシュで10代の少女のように見えるけれども、実際は20代後半だったりします。

ヒース・レジャーと婚約、出産、破局、そしてヒースが亡くなる…といった頃かもしれません。

ハリウッドのオーラを消し去って、華やかさのかけらもない役ですが、ぴたりとはまって、とても魅力的でした。

少し苦しい映画でしたが、それも含めて楽しく鑑賞しました。