『ドリーム・ホース』欲しいのは胸の高鳴り!

馬が可愛い! 村の人が陽気で楽しい! 一緒に夢を持つ仲間がいて、それぞれが生きがいを見出していく姿に感動しました。素直に応援できる、爽やかな作品。

あらすじ

イギリス・ウェールズの小さな村で夫と暮らすジャン。パートと近所に住む親の世話で過ぎていく毎日に虚しさを感じていたが、ある日、馬主経験のある税理士ハワードに触発され、競走馬を育てることを思いつく。週10ポンド(日本円で1600円くらい)を出し合って、組合馬主となった村人たち。「ドリーム・アライアンス(夢の同盟)」と名付けた馬はレースを勝ち進んでいく。実話を元にした物語。

夢のようなお話でも実現可能、行動あるのみ

「目覚めた時にワクワクした気持ちになること」平凡な毎日の中で、ジャンはそれが何かをずっと探していたようです。探していたからこそ、馬という夢を見つけた時に、これだ!と感じて猛進することができたのでしょう。

一週間にひとり10ポンドで競走馬が持てるというアイディアが全ての始まりですが、夢のままにしないでためらわず一歩を踏み出し、どうすれば叶えられるのかを考え行動したことで、結果的に自分とコミュニティに大きな喜びをもたらしたのです。

何歳からでもワクワクするような毎日に変えられること、行動することで夢を実現へと引き寄せることができるということが示されていて、見ているこちらまで元気が出ました。

彼らが馬を応援する姿を見て、私達が彼らを応援する気持ちになっていったのです。

馬主が集まり、競走馬はお金持ちの所有するものという雰囲気の中、「レースでは平等」と言い放ったおじいさんが、とても誇らしげで良かった。夢が実現すると、自信や誇りにもつながりますね。

欲しいのは、儲けではなく「胸の高鳴り(ホウィル)」

意外に感じたのは、馬主組合を作る序盤で「決して儲けようとしないこと」と彼らが確認し合ったことです。競走馬を育てるということは、イコール勝ち負けにこだわり儲けを考えることではないか?というイメージがありました。

考えてみれば、競走馬を育ててよい成績を上げ続けることはとても難しいことと素人でも分かります。勝負だけに注目してしまえば大切なものを見落としてしまうということをハワードはよく分かっていて、そう言ったのでしょう。

村人たちも賛同して、儲けではなく「胸の高鳴り(ウェールズ語でホウィル)」を求めて結成したことが、道を誤らなかった重要なポイントだったのです。真の目的は馬を応援してワクワクしたい、生きがいを見つけたい、そんなことだったのですね。

自分が自分でいられる場所

また、誰かの子どもとして、誰かの妻として、の自分とは別の「自分が自分として輝ける」場を持つということが大切。そんなメッセージがありました。

自分そのものでいられる場を見つけることにより心が満たされ、ぎくしゃくしていた家族に対しても理解、感謝が生まれて心がほぐれていくのです。

レースに勝っては皆で大喜びし、負けては皆で悲しみ、時に意見の分かれることもありながら、ひとつのものに向かっていくことが、こんなに楽しそうに見えるとは正直思わず、いいものだなぁ、とうらやましく感じました。

私自身、これまでの人生で何かのコミュニティに属するということがほとんどありませんでした。ですが、最近になっていくつかのグループに所属させていただき、たしかに自分の立場とは関係のない場所にいることはとても心地よいものだと、遅ればせながら気づき始めたところでした。そのため、共感する気持ちが大きかったのかもしれません。

おわりに

ジャンの発案が町ぐるみの大きな盛り上がりとなったことは大きな他者貢献でしたが、それが巡り巡ってジャン自身の幸せにつながったことが私にはじーんとくるポイントでした。

皆で困難を乗り越えた最後のシーンは、ちょっと笑ってしまうような演出でしたが、それもまた「いいじゃないの!」と共感できる爽快な作品です。

馬がとても可愛く、競馬のシーンも素敵なので、生き物好きな方にもおすすめの映画ですよ!