「Pearl パール」感想文・その後「X エックス」鑑賞

ネタバレありとさせていただきます。

去年公開された三部作の第一弾「X」は見ていなかったのですが、第二弾の今作のみでも一応理解できました。

A24、農場、スラッシャーという親和性バッチリの2作品について書きます。

私が見た中では「ミッドサマー」「MEN同じ顔の男たち」と同様、2作品とも薄気味悪い雰囲気が全編に漂っており、性描写も絡めていて気持ち悪いし、後味も悪く、嫌な気持ちにさせられるのですが、それでもなぜか気になって見てしまうという、厄介なタイプの映画。

正直なところ、この手のA24はそろそろやめようかとも考えております。

「X エックス」

2022年公開、舞台は1979年。主人公はマキシーン。老婆パールと同じミア・ゴスが演じています。

3組のカップルがポルノ映画撮影のため農場を訪れ、貸主の老夫婦(主に妻)から次々と襲われていくという「老人ホラー」

この設定から、気乗りはしなかったのですが、『Pearl パール』理解のために必要かと視聴しました。

1918年の被害者の痕跡や、遺体処理に利用されるワニも健在。ただ、テイストが異なっていて、あまり関連性はなかったようです。

パールでは戦争から帰ってきた夫が惨状を目にし、その後どうなったかわかりませんでしたが、なんとパールの行動を認め、受け入れていたようです。

もしかするとその後60年の間、見つからずに殺人を繰り返していたのかもしれません。恐ろしい…!!

性欲が異常に強く(若い頃のパールにも片鱗あり)、若者たちを監視→のぞき→若い女性に嫉妬し殺害するという、気色悪さ。

何を見せられてるのかな〜というゾワゾワ感がずっとありました。それが狙いだとは思いますが、本当に気持ち悪い作品でした。

「Pearl パール」

「Pearl パール」は2023年現在公開中、舞台は1918年。主人公パールはミア・ゴス。「X」の前日譚。

スターへの夢を持つ女性パールが、支配的な母親、身体の不自由な父親の世話、貧困、戦地から戻らぬ夫、などの抑圧された生活からシリアルキラーへと変貌し、夢を妨げる者を次々と毒牙にかけていきます。

前作のとにかく暗かった画面から一変して、トーンが明るくなっており、前半は夢を追う女性としてパールが描かれていました。

パールは少し思い込みの強い程度の人物像であり、境遇に同情もしかけましたが、一旦ブチ切れたら最後、堰を切ったように、殺人を繰り返していきます。

対人的には大げさともいえる表情を見せるのに、殺人の時は無表情なところが恐ろしいです。

今作のパールには前作のように無差別的なところはなく、自分の周りの邪魔な人間を消していく目的がありました。

「自分の思い通りにならないから殺す」ということです。

不条理とはいえ、理由があるのが、前作と違うところです。逆に、最初の殺人までよく我慢できたと思いました。

母親からただただ厳しく抑えつけられ、愛情が得られない。夫も戦地から帰ってこない。父親は身体が不自由で何もできない。

パールの「スターになりたい」という望みは、愛されたいという渇望だったようです。

ラストの恐ろしい食卓は、誰からも責められることのない、穏やかな理想の食卓だったのかもしれません。そこへ戦地から戻ってくる夫!

エンディングのミア・ゴスの表情はもはや顔芸と言っても過言ではない圧力でした。

この笑顔は本当に「愛してくれる者」を手に入れた喜びの表情だと思うのですが、シリアルキラーの狂気の笑顔であり、夢に出てきそうなインパクトでした。

来年公開される三作目は『MaXXXine』というタイトルなので、当然マキシーンが主役になってくると思われます。

パールと同じミア・ゴスが演じることから、出自がどうなのか…パールの孫? TV演説の伝道師の娘? などの秘密が明かされるはずです。

結局また見てしまうんだろうなぁ…これはあまり人にはオススメできない映画として分類させていただきます。本当に興味のある方だけ、ご覧ください!