ヨルゴス・ランティモスの初期作品。
予想はしていましたが、気味悪さと不快感はかなりのもの。
一番嫌かも…よくこんな映画作るわほんと!
ダンスがまた気持ち悪くてね…ゾワゾワしました
目次
妄執にとりつかれた両親と純真無垢な子どもたちを主人公に、極限の人間心理を描く。ギリシャ郊外に暮らすある裕福な一家は、外の汚らわしい世界から守るためと、子どもたちを家の中から一歩も出さずに育ててきた。厳格で奇妙なルールの下、子どもたちは何も知らずに成長していくが、ある日、年頃の長男のために父親が外の世界からクリスティーヌという女性を連れてきたことから、家庭の中に思わぬ波紋が広がっていく。
2009年製作/96分/R18+/ギリシャ
原題または英題:Dogtooth
配給:彩プロ
劇場公開日:2012年8月18日
外の世界は恐ろしいと両親から教育されて隔離され、学校はもちろん、敷地から一歩も外へ出たことのない三兄妹の話です。
ホームスクーリングといっても、教えていることは現実と違うことだらけで、外界とのつながりを断つためにペットボトルのラベルまで剥がす徹底ぶり。
もはや父親による監禁であり、虐待です。
この異常さを、淡々としたタッチで終始描いています。この家族の価値観は異常でしかないのですが、この家の中では普通のことなのです。
子どもたちと言ってもキーアートの通りの大人ですが、社会性がないため精神的に幼く、まるで子どものようです。
同じように毒親から監禁された男の話『悪い子バビー』もそうでした。
経験から言うのですが、不登校で子どもが家にいた期間は非常に幼く、登校し始めたら急に大人らしくなってきたということがあります。
外に出られないことで、精神面の成長が妨げられていたのだと思います。
ラストはとても不気味でした。父親の職場前に止められた車のトランクが写され、そのまま物語は終了します。
トランクの中には自分で犬歯を折って血まみれの長女(名前もつけてもらえていない!)が、外の世界に出るため隠れているのです。
たぶん、内側から開けるのは無理でしょう。もし父親が気づいて開けたとすれば、激しい折檻が待っているでしょうからそれも地獄です。
彼女はこのまま亡くなるのだろうと思います。
父親は常々、外にでることが危険だと子どもたちに言い含めていましたが、皮肉にもそれが現実となってしまったのです。
この両親の異常な子育ては何が元になっているのでしょうか。
たとえばキリスト教原理主義的なものなのか、父親が異常者だったのか。妄想に取りつかれたというあらすじですが、この両親、頭がおかしいとしか…。
はっきりと語られていないため、後味の悪さ、すっきりしない感じが残ります。
それも監督の狙いのようですね。
子どもを家畜のように完全管理して、自分の思い通りにするという欲望、外界に触れさせることへの不安、社会への極度の嫌悪、そんなところでしょうか。
自分は普通に外に出て社長をやっているのに、身勝手極まりないですね。
まぁ、真面目に考えるのも不愉快なほどの狂気でした。
子どもの教育のあり方によってはこんな恐ろしいことも起こり得るのかも、と感じる映画でした。
長女が映画のビデオに影響を受ける(フラッシュダンス、ロッキー、ジョーズ)シーンなど、ちょっと面白かったのかもしれないですが、気持ち悪くてどうにも笑えませんでした…。