先日『パトリシア・ハイスミスに恋して』を鑑賞したので、未見だった『キャロル』を観ました。
ちょうどクリスマス前の季節にピッタリのとっても素敵な作品です。
さきほど『ブエノスアイレス』の感想を書きましたが、男性同士の愛憎入り交じる泥臭い作品とは好対照で、こちらは女性同士の美しくピュアな愛情物語です。
製作年を確認しないで観たので、実はかなり最近の作品だということに驚きました。というのも、衣装や美術、画像の色合いまで、1950年代そのものを表現しているからです。
時代背景となるこのころのアメリカが見事に再現され、繊細な演出がされています。これが物語の雰囲気を一層深化させ、観客を当時の世界に引き込んでくれます。
キャスティングも最高です。ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラがとても美しく、見事な演技で、登場人物たちの心の機微や複雑な感情を表現しています。
テレーズ(ルーニー・マーラ)とキャロル(ケイト・ブランシェット)がデパートで出会うシーン。
そしてラストの、キャロルのいるレストランにテレーズが訪れるシーン。
これらは言葉も交わさず、ただ見つめ合う二人の姿が描かれるのですが「まなざしで愛を語る」とはまさにこのことだと、心をわしづかみにされるのです。特にケイト・ブランシェットが凄いです。
偽りの夫婦生活を強いられ、本当の自分を押し殺して生きる、そして愛する娘から引き離されて苦しむキャロルの姿が、悲しくも美しいです。
同性愛という問題を超えて、社会の偏見に立ち向かうこと、心の葛藤を乗り越えることなど、現代にも通じる普遍的なテーマが感じられます。
ケイト・ブランシェットは長身で174センチあるのですが、美しくたくましい(笑)背中を披露しているのも、ちょっとした見どころかもしれません。
結構ゴツゴツしてるんだな…と思いました。もちろん綺麗ですけどね。
パトリシア・ハイスミスの原作においてこの物語がハッピーエンドで終わっていることは、1950年代としては斬新であり、多くのレズビアンを励ましたと言われています。
今作のラストシーンはまさに「心に従って生きる」大切さを語らずに表現していて、涙があふれました。
感動的でとても洗練された作品であり、観る者に深い印象を残す、素晴らしい作品です。ちょっとほめ過ぎかもしれませんが、本当にパーフェクトな映画だと自信を持って言えます。
ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思いました。