『レザボア・ドッグス』(1992)感想文・U-NEXTにて鑑賞

クエンティン・タランティーノ監督のデビュー作です。残酷、血まみれ、差別的で言葉も下品。悪趣味を極めながらも、痒いところに手が届く絶妙な構成と、センスの良さを感じます。

宝石泥棒の失敗をめぐり、誰が裏切り者なのかと疑心暗鬼になる犯罪者集団の話であり、信頼と疑いが複雑に絡んで、壮絶なラストへと繋がっていきます。

冒頭は大物ジョーと息子エディに集められた5人の男たちの食事シーンから始まります。タランティーノもちゃっかり出て、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」の解釈についてどうでもいい下品な持論を長々と展開します。

このシーンは意味があるのかないのか? 後から思えば、意味を感じます。

宝石泥棒として集められた男たちが、一見和やかに歓談している冒頭は、疑い疑われ、数時間後には撃ち合ってほぼ全員死亡という衝撃のラストシーンと対比していて、ブラックな皮肉に満ちています。

対等に会話している中で、誰と誰が信頼関係にあり、誰が裏切っているのか…見終わってからもう一度冒頭に戻ると、100分前とは見え方が全く違い、とても面白く感じられました。動画配信ならではの楽しみ方です。

緻密な脚本であると感じたのは、物語が進むにつれ「この人はどういう人物なんだろう?」と感じた時に個人の過去エピソードが絶妙のタイミングで挟まってくるところです。

知りたい瞬間に提供される情報は、当然頭の中にすんなり入ってきます。引っかかりがないため、映画内世界にどんどん引き込まれていき、見事だと思いました。

親子、旧知の仲、ここで培われた信頼関係、そして疑念。さまざまな人間関係が交錯して、後半の撃ち合いに象徴されるような複雑さがあらわになってくるところは、とても興味深いです。

人物描写が多面的で、各々に矛盾がほぼないのも素晴らしいです。

私個人は、ピンクの存在がツボでした。ピンクという名は嫌だとゴネて、チップの1ドルも払いたくないケチな男。誰かが裏切っていると言い出したのもピンクです。

そんな人間が結局しれっと逃げ延びるのですから、皮肉が効いていて面白いです。

犯罪映画のシリアスさを新たな視点で描いた『レザボア・ドッグス』。もう30年前の作品になりますが、古さを感じさせない面白さがありました。

残酷なシーンが多いことや、パクリ?も多いことで有名なタランティーノですから、見る側の好みは分かれますが、総合的に見て、私はやはり好きだなぁと思いました。