『8人の女たち』(2002)映画感想文・U-NEXTにて鑑賞

フランソワ・オゾン監督による、ミュージカル仕立ての映画。非常に舞台っぽく、密室劇となっています。

1950年代のフランス。クリスマスの朝に屋敷の主人が何者かにナイフで殺されていた! 犯人は家にいる8人の女たち…妻・義母・妻の妹・実の妹・娘2人・メイド2人の中に…という物語。

カトリーヌ・ドヌーブやイザベル・ユペールなど、フランスの名女優が美しいドレスを身にまとい、罪のなすり合い、腹の探り合いを演じる、とても面白い眼福の一本です。

何の情報もなく観たので、登場人物が急に歌い始めるのに驚きました。しかも中にはちょっと微妙な歌声の方もいらして、それもまた一興です。

彼女たちの個性的で力強い演技に、どんどん引きこまれていきました。

物語が進む中で、女性たちの秘密がどんどん暴かれていきます。実はレズビアン、などは可愛い方で、全員かなりの秘密を抱えています。

半ば開き直りのように語られるうちに、8人の女性たちは生き生きとしてくるように感じられました。

屋敷の主人が亡くなったことで、皆、これまであるべきだった自分の枠から解放され、本来の自分を取り戻して輝き始めたのです。

女たちの化けの皮がはがれ、本来の姿があぶり出される様子がとても楽しく、どこまでエスカレートするのかとヒヤヒヤするほどでした。

たいして誰も嘆き悲しまず、自分の心配ばかりしているところが、またいいです。

カトリーヌ・ドヌーブがとても美しくて可愛らしく、日本ならコミカルな演技もお似合いの松坂慶子さんが合いそうだと感じました。

また、映画全体が会話劇で、三谷幸喜さんのミステリー脚本を彷彿とさせる感じもしました。

ミステリーなのでラストは書きませんが、あまり驚かなかったので、古典戯曲でもありますし、どこかで同じ演目を見たことがあるのかもしれません。忘れていたため新鮮な気持ちで見られて、かえって良かったと思いました。

フランソワ・オゾン監督の映像表現は常にリッチで美しく、緻密なセットと演出がとても心地よく、贅沢な気持ちになります。映画というより舞台芸術のようです。

年末にかけて、フランソワ・オゾン作品は引き続き鑑賞していきたいと思います。観たい映画がU-NEXTばかりで、当分やめられなそうにない…。

ものすごく感動する、というタイプではありませんが、洒落ていて贅沢で、センスが良くて面白くて、しかも長すぎない(大事)、そんな映画が観たい方にはおすすめです。