予告映像で想像していた内容(面白い、楽しい、B級感がある)プラス、とても味わいのある作品で意外でした。満足度がとても高かったです。
観ようかどうしようか迷っていて鑑賞が遅れましたが、これは観ておいてよかった!
モキュメンタリーの手法だと聞いていたので、手持ちのカメラで撮っているのかな、そうすると酔いそうだなと思って迷っていました。
座席を後ろの方にして対処することで、ほぼ大丈夫でした。スクリーンも小さかったため、さらに都合が良かったです。
「廃刊寸前のUFO 雑誌『宇宙探索』。編集長のタンは編集部員とともに、中国西部に出現したという宇宙人を探しに行く」というロードムービー!?です。
タンというのが実にそれらしいキャラクターで、中年の冴えないおじさん。髪はボサボサ、怪しい機械をあやつり、UFOや宇宙人のことしか頭になく、目撃話に騙されては損をしています。
旅の途中で不思議なできごとや出会いがあり、一行は果たして宇宙人に会えるのか? という物語上の目的はあるのですが、この物語は、主人公タンの心の旅そのものでした。
西遊記を想定して作られたということを後から知り、ああ、なるほどと思いました。ありがたいお経を求めて天竺に向かう三蔵法師一行と、宇宙人を求めて西へ向かうタン編集長一行はたしかに重なります。
途中の野生のロバに乗るシーンが面白い反面、唐突な気がしたのですが、西遊記に出てくる白馬に見立てていたのかと、後から納得しました。スケールが全然違いましたが(笑)
あと、印象に残ったのは、一緒に旅する仲間たちの、持ち物を納めていたテントが燃え上がる場面です。
それぞれが大切にしていた「物質的なもの」が失われても、彼らはあまり動じません。旅を通して心の強さを培い、不要なものを手放したように見えました。
タン編集長については、馬鹿にされても、自分の追い求める道をあきらめない愚直な姿が、おかしさから、次第に感動に変わっていきます。
彼がある理由から「人類の生きる意味とは何か」という問いを立て続けていたことがわかってくるからです。
彼の心の中の問いが、宇宙人探しに没頭する理由のひとつだったとわかり、ただの面白いだけの物語ではない、味わいを生み出していました。
UFOや宇宙人という「目に見える何か」を探し求めながら、心の中の宇宙であり謎を解き明かそうとしていたのでしょう。
それゆえ、ラストシーンの講演は感動的でした。
一方で、全般に渡って、バカバカしさやチープさ、胡散臭さなどが漂っていて、大変面白く、そのバランスも絶妙です。
場面場面を非常に丁寧に描いていて、とても力のこもったいい作品でした。
中国の映像学校の卒業制作と聞いていて、学生さんの作品?と正直それほど期待していなかったのですが、レベルの高さに驚きました。
未見の方は、機会があればぜひ御覧いただきたいと思います。