『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』映画感想文・世界観が楽しめました

はじめ予定に入っていませんでしたが、何度か予告を見るうちにだんだん気になってきて鑑賞。

主人公モナ・リザは予想していたほど残酷な人物ではなく、安心が半分、少し期待外れが半分でした。

彼女は12年間、精神病院に隔離されていて、ある赤い満月の夜に、突如、特殊能力を手に入れます。その、目が合った他人を操る能力で、病院を脱出し、ニューオリンズの町でとあるポールダンサーの母と子に出会い…という話。

冒頭、拘束衣で裸足のまま脱走するまでは、とても凶暴な少女で、この先どうなるのかとある意味すごくワクワクしたのですが、その後トーンダウンしてしまいました。

振り返ってみれば殺人もしていないし、特殊能力もあまり使っていません。もっと利用して悪いことをしてもよかったはずですが、基本おとなしくていい子のようでした。

そして元々が精神疾患…統合失調症と言っていたような気がしますが、病気に対して誤解を招く設定ではないかといてう点が、私は少し気になりました。

警察が犯罪者扱いで追うのですが、真面目な話、彼女は実際目を見ただけで手を下していないし、入院中であったことを考慮して、保護するスタンスでなければ駄目じゃないのか? と感じました。

まぁ、そんな細かいつっこみどころはありながらも、全体的には飽きずに楽しく観ることができて、鑑賞後感も良かったです。

この映画ではモナ・リザの視点を通して「世の中の人間の善悪を先入観で判断してはいないか?」という問いかけをしているように思いました。

良さそうな人が実は悪かったり、その逆だったり…モナ・リザは迷いながらも、他者というものを学んでいきます。

先日観た『悪い子バビー』と、設定が少し似ていて(母親から30年軟禁され、殺害して外へ出る)、そちらの方が強烈だったため、つい比べてしまい、優しい物語に見えました。

バビーは社会に順応することを目的としているのに対して、モナ・リザは逃げることを第一に考えて、逃亡劇という形でした。

今作のラストで一応の成功、と見ていいのでしょうが、流れに任せて、結果逃げるだけだったのね…という感じもします。

世界観は良いので、欲を言えばこの雰囲気のまま、もう少しモナ・リザ本人の成長のようなものが見たいと感じる作品でした。

終わり方を見ると、今作は序章のように思えます。続編が期待できそうなので、モナ・リザが新たな土地で特殊能力を発揮するのを、楽しみにしたいと思います。