『サウンド・オブ・フリーダム』映画感想文・制作意図に不穏なものを感じる…

実話を元にした映画。

子どもの人身売買に立ち向かう元刑事の話ですが、題材が題材だけにやりきれない思いがありました。

↑携わるうちに精神を病んでくるのもわかる気がします

あらすじ

児童誘拐、人身売買、性的虐待など、国際的性犯罪の犠牲となった少年少女を救い出すミッションに挑んだアメリカの元政府職員ティム・バラードの奮闘を、実話をもとに描いたドラマ。

性犯罪組織に誘拐された少年少女の追跡捜査を進めていたアメリカ国土安全保障省の捜査官ティムは、上司から特別な捜査の許可をもらい、事件の温床となっている南米コロンビアに単身潜入する。そこで彼は、いわくつきの前科者や捜査の資金提供を申し出た資産家、地元の警察などと手を組み、大規模なおとり作戦を計画する。ティムの少年少女たちの命を救う捜査は、やがて自身の命をもかけたものになっていく。

2023年製作/131分/G/アメリカ
原題または英題:Sound of Freedom
配給:ハーク
劇場公開日:2024年9月27日

(『映画.com』より引用)

感想(ネタバレ含む)

本当はあまり気の進まない映画でした。

しかし、公開直前まで無料券を配布していて、それだけ製作者の気合いが入っているのかもしれないと感じ、鑑賞してきました。

信じられない数字ですが、世界で人身売買の被害児童数百万人、1500億ドル市場だそうです。

1500億ドルとは、だいたい22兆円…子どもたちが性対象として、奴隷として、臓器目的として、売買されているというおぞましい実態を知りました(事実であれば)。

冒頭の監視カメラの映像では親の目を離した隙に次々と子どもがさらわれていきます。実写風に見えましたが、本当かどうかは謎です。

この映画が公開されるまでアメリカでは数年かかっていて、何らかの圧力がかかっていたと想像できます。ただ、この映画に何かしらの情報操作の目的があるようにも思えて、判断が難しい。私が疑い深いのでしょうか…。

主人公のティムは小児性愛者の検挙を続けていましたが、精神的に疲弊し、現実には子どもたちは国外へ送られるため救えない、というジレンマを抱えて仕事を辞めようとしました。

ある日、救い出した少年ミゲルをきっかけに、南米に乗り込み、ミゲルの姉ロシオを探すのですが、そこは非常に物騒な地域。

ここで私はふと疑問に思いました。

ティムには妻もいるし、ミゲルやロシオと同じくらいの歳の子どもが4〜5人もいるのです。

数百万人のうちの一人を助けるために、命をかけた潜入捜査をすることができるのだろうか、ということなのです。

あまりに危険すぎて、そこまでする動機がピンときませんでした。彼に何かあれば、子どもたちが父親を失ってしまうことになるのですから。

しかし、最後にこの行動は妻からの強い後押しがあったと語られていました。

そういう志の高いご夫婦だったのか、とやや理解はできましたが、危険を冒してここまで他者に尽くせる人もいるのかという疑問は少し残りました。

無事帰ってこられたから良かったものの、これで亡くなったりしたら本当に悲劇も悲劇ですよね。

映画的な趣はありませんでしたが、自分の知らなかった世界を見ることができました。

技術的には劇伴の音が大きくて少し気になり、途中で耳栓を着用しなくてはならなかったのが残念だったかな。

珍しいパターンで、最後に監督からのメッセージがあり「メッセージまであと〇〇秒」とエンドロール中から右下に出ていました。

外国では割と本編が終わったら席を立つ人がいるらしいので、最後まで見てもらえるよう工夫したのでしょう。

ということは、本当に言いたいことがエンドロールの後にあるということ。

映画的余韻を壊してでも言いたい、映画なのにQRコードも載せちゃう…それは「寄付してほしい」ああ…そういうこと!?

そのページを覗いてみると、がっつり寄付ページに誘導されました。その時「お金を払って見なくて良かった」と思いました。

内容的にも、子ども二人を救出してそれで一件落着とはいかない問題であるため、なんだか気が滅入って仕方ないのですが、この問題は興味もあるので、裏事情を含めて自分なりに調べてみたいと思いました。