クリストファー・ノーランの初監督作。60万円という超低予算で作られた70分のモノクロ作品です。
しかし、それらを感じさせない見応えと面白さがありました。
のちのノーラン作品と共通する時間の操作と緊張感のある展開。見て良かったです。
作家志望のビルは創作のヒントを得るため、街で目に止まった人々を尾行する日々を送っていた。そんなある日、ビルは尾行していることをターゲットの男に気づかれてしまう。その男コッブもまた、他人のアパートに不法侵入して私生活を覗き見る行為を繰り返しており、ビルはそんなコッブに次第に感化されていく。数日後、コッブとともにアパートに侵入したビルは、そこで見た写真の女性に興味を抱き、その女性の尾行を始めるが……。
1998年製作/70分/イギリス
原題:Following
配給:AMGエンタテインメント
劇場公開日:2024年4月5日その他の公開日:2001年12月8日(日本初公開)
『映画.com』より引用
「時系列シャッフル型サスペンス」とキーアートに書いてあり、まさにその通りでした。
初監督作品からこのように「時間を組み替える」ことをやっていたのですね。
ノーランの作風が今はわかっているので、唐突に不明なシーンが出てきても混乱はしませんでしたが、当時初見だったら、かなり面食らったと思います。
突然主人公の髪型や服装が変わり、何やら口に詰め込まれ…ん!?なにこれ!? というシーンが差し込まれていくのです。
私の悪い癖として「情報過多になると脳がシャットダウンしようとして眠くなる」ため、例のごとく一瞬ウトウトしてしまいました。
たった69分の映画なのに寝るなんて本当に嫌なのですが、ノーランの映画は私にはちょいムズで、脳が拒絶反応を示します。
そんな困難にも打ち勝って、なんとか内容を理解。
難易度はテネット>メメント>フォロウィングという感じです。
テネットで相当鍛えられたため、易しく感じたほどです(寝ましたが)。
最後まで見て思ったのは、またもや主人公が愚かな人物だったなぁ…ということ。
メメントやテネットと同様、主人公が一番何も知らない立場でした。
そういえばオッペンハイマーもある意味愚かでしたし、バットマンもノーランが描くとちょっと間抜けな感じでした。
だいたい、主人公がどうしても好きになれない、共感できないパターンが多いのです。
人間の愚かさを表現しようとしているのか、人物を描き込む技量が足りないのかは分かりませんが、デビュー作からそうだったんだね…という気づきがありました。
時系列を入れ替えるから、行動の根拠が見る側にわかりにくくなるのだと思います。
今回、謎が解けるラストは、他の作品よりもすっきり感があり、偶然うまくいき過ぎな感じもややありましたが、一作目から世界観が確立していて、やはりすごいと感心しました。
特別好きなわけでもないのに、時系列が気になって毎回2回くらい見てしまうノーラン作品。
時間がかかってしょうがないと文句のひとつも言いたいところですが、配信になればもう一度見てみようかと思います。
もちろんクリストファー・ノーランのファンの方には必見の作品です。
この作品からオスカー7冠への道が始まり、まだ続いていくという意味で、感慨深く、オススメです。