スタイリッシュなモノローグで始まり、テンポよく歯切れのいい展開のため、気持ち良く見続けられます。
しかし流れに乗っていると、途中から違和感が。
なんかこの人、要所要所でツメが甘いかも!?
視点を変えて見始めると、とても面白かったです。
なんで絵なの?
目次
あらすじ
あるパリの夜。暗殺者(マイケル・ファスベンダー)は用意周到に向かいの高級マンションのターゲットを狙うが、失敗。
暗殺者は逃亡に成功する。しかし雇い主は自宅を襲い、パートナーを傷つける。
復讐のため、自分たちの身を守るために、暗殺者は犯人を倒すことを決意。ドミニカ共和国やアメリカを股にかけた追跡劇が始まる。
2023年製作/113分/PG12/アメリカ
原題:The Killer
配信開始日:2023年11月10日
その他の公開日:2023年10月27日(日本初公開)
監督
デビッド・フィンチャー
キャスト
マイケル・ファスベンダー
ティルダ・スウィントン
アーリス・ハワー
真面目に「暗殺者の話」ととらえると、見たままの話で「まぁ…面白かったよね」という感想で終わりそうです。
実際私も、パートナーが暴行されて復讐?に転じるあたりまで、そのように見ていました。
ところが、冒頭からせっせと暗殺者の心得をつぶやいていた主人公、言うこととやることが正反対。
ここで「あ〜これ、残念な人の話?」と思いました。
カッコイイはずのマイケル・ファスベンダーがなんだか滑稽に見え、急にこの映画が面白く感じられるようになりました。
感情を排して、完璧に遂行しなくてはいけないのに、にじみ出てくる人間味…抜け、弱み、詰めの甘さ、などなど。
「ザ・スミス」を聴いて一生懸命に落ち着こうとしているのも、可愛いというか、中学生のようです。
モリッシーの歌声はあまり落ち着くタイプのものではない気がしますが、それも主人公の弱いところかもしれません。
見方によっては、最初から「殺し屋が窓全開で外の様子をうかがって、変では?」と気づく方もいるでしょう。
しかし、後から気づいた私は「そういえばあれもこれも…なんか変だった」と気になり始め、続けて2回見てしまいました。
そんな意味でNetflixでの配信は、とても助かります。
興味深いのは、最初は殺さなくてもいいような一般人まで丁寧に殺していたのに、最後、雇い主を殺さず立ち去ったところです(殺せたのに)。
やる気がなくなったのか、どうでもよくなってきたのか、何をしに行ったのか…。
足を洗ったつもりかもしれませんが、この後、絶対に殺られると思います。
まるで中学生が憧れるまま殺し屋になったような主人公に、共感とも恥ずかしさともつかない、微妙な気持ちになってしまいました。
しかし、いずれにせよ人間臭さあふれる、愛すべき人物に描かれていたと思います。
フィンチャーはいかにもなコメディ風にしないで、シリアスに寄せているのだと思いますが、真面目にふざけているので、とても分かりづらいです。
ツメが甘くて、見る側がツッコミを入れる楽しい映画としても、配信にふさわしいですね。
面白さがどこにあるのか分かりづらかった、という方は、視点を変えて、コメディとして見てみるといいと思います。