宮沢賢治の父親は子煩悩であったと伝え聞きます。
作家として認められる前に若くして病で亡くなった賢治との、父と子の話となれば、もう、100%泣くよね…ということで、人の少ない最前列を取ってみました。案の定、後半ほぼずっと泣きっぱなしでございました。
俳優陣がとてもいい!
役所広司と菅田将暉、父と息子のぶつかり合いや理解し合うシーンなど、二人の場面が多いです。
菅田将暉演じる宮沢賢治が相当強い個性の持ち主であることから、役所広司もそれに匹敵するインパクトが必要です。一応父親が主役ですから。
そのため演技の応酬ということになり、熱演のバトル?が繰り広げられ、ストーリーとは別の面でとても楽しめました。
また、物語の中心人物ではありませんが、賢治の妹トシ役の森七菜さんが、とても印象的でした。
賢治に先立って病に倒れるのですが、森七菜さんの演技をきっかけに涙が出始めて、止まらなくなってしまいました。
子どもを認め、応援できる父親
家業があれば、長男が継ぐのがあたりまえの時代であり、家とは別の宗派に変わることも許されないことだったでしょう。
他にも、農業大学への進学や人工宝石の製造など、自分の興味の赴くままに突き進む賢治。
世間の風当たりや、父親としての悩みが政次郎にはあったはずですが、結局は、いつも賢治の言うことを認めるしかない、甘い優しい父親でした。
自ら子どもの看病をして、世話を焼いて、この時代の父親としては珍しかったと思います。
世間でまだ認められず、理解者の妹を失い、この子を認めてやるのは自分しかいないという覚悟が、時を経るに従って強くなっていくのを感じました。
「雨ニモマケズ」を病床の賢治の前で朗読するシーン。少し演出が過ぎたかも?と感じましたが、その後の「お父さんにほめられた」という賢治の言葉につながったのは良かったです。
ラストはね…
政次郎が子どもたちに思いを馳せる、タイトル回収ともいえる素敵な演出が最後にありました。
そして真っ黒な画面がしばらく…これが少し長くて不思議な感じでした。「終わり? まだなにかあるの?」というような戸惑いが。
まぁ、終わりだったのですが、そこで、いきものがかりの明るい曲調の主題歌が流れ始め、私としては少し違和感でした。
最後のシーンが余韻を含んでいたため、もう少し静かな曲…インストでもいいので、浸りたい気分でした。そこがなぁ…唯一の残念なところです。
私だけかと思ったら、各地で言われているようで、まぁ…合っていないんでしょうね。
ただ、本編に限って言えば心温まり、後半はたくさん泣ける、いい映画でした。
宮沢賢治の読んでいない作品に触れようかなと思います。