『PIGGY/ピギー』感想文・愛憎相半ばするとはまさにこのこと。ラストの畳み掛けがすごい

リベンジホラーといわれ、キービジュアルもこんなですし、そのつもりで観に行ったら、意外や意外! 青春映画というか、主人公の成長物語なのでした。

想像しているよりずっと心理描写が深くて面白かったです。ただのスラッシャー映画ではなく、満足度が高かったです。

ネタバレありとしなければ語れないので、そうさせていただきます。

サラは同級生の女の子たちが連れ去られるのを目撃しますが、ひどくいじめられていたこともあり、すぐに通報することができません。

犯人と直接対面したため恐怖もあるし、同級生への復讐心もある…その辺りの揺れ動く心理描写が巧みです。

そして、犯人が少しずつサラの前に現れるようになるため、その意図が分からず、かなり不気味。ほとんど言葉を発しないのも怖いです。

顔を見られたことによる口封じのために近づいている?と思うのですが、どうやら犯人はサラに特別な感情を持っていて、危害を加えるどころか、いじめた子たちを成敗してくれる立場のようだと気がついてきます。

さらに、サラもそんな犯人に惹かれていくという、驚きの展開。また彼もなかなかのイケメン(イケオジ)だったりして、心が揺れるのも分かる気がします。

振り返りながら、すごい話だなとあらためて思いました。

そもそもサラは家庭でも父母には叱られてばかり、弟にも馬鹿にされ、学校でもいじめられ、自分の味方はいませんでした。

そこへ現れた殺人鬼が、よりによって初めて自分を理解し守ってくれる存在だったのです。

彼の置いていったお菓子を食べるということで、サラが受け入れていることが分かりました。普通食べないですよね。

こうして、台詞では説明されなくても、その行動から「恐怖から好意へ」という変化の分かる場面が多々ありました。

これまで自分に自信もなく、自己主張もできなかったサラが「いつも間違ってばかりいた」と語る場面は大変切なかったです。

そして、怒涛のラストシーンに至るわけですが、ここでサラは瞬間瞬間で壮絶な選択を強いられます。

ほとんど一瞬のうちに目まぐるしく場面が展開し、こちらもついていくのが必死。サラの複雑な感情も爆発します。

間違ってばかりいたというサラの選択は、苦しみを伴いながらも納得のいくものに終着しました。

全てが終わった後のすがすがしさ、サラのたくましさに、感動しました。こんな奇怪な成長物語ってあるんだなぁとしみじみしました。

高校生役のラウラ・ガランは37歳だそうで! そこにも驚きます。

いい加減やめようといつも思っているのですが、たまにこういう面白いホラーもあるのでやめられないんですよね…。

見ごたえのある映画でした。心理描写系ホラーの好きな方はどうぞ!