ダリオ・アルジェントの長編2作目。
決して面白くなくはないのですが、一作目『歓びの毒牙』と比べると普通というか、印象の薄い作品でした。

目次
盲目の元新聞記者フランコ・アルノは、幼い姪と一緒に散歩している最中に、路上に駐車した車の中で男が言い争っているのを耳にする。その日の深夜、アルノの家の近所にある遺伝学研究所に何者かが侵入し、続いてそこの所員である博士が列車にひかれて死亡する事件が発生。死んだ博士が車内で言い争っていた人物だと気づいたアルノは、若き新聞記者ジョルダーニとともに事件の調査に乗りだすが……。
1970年製作/112分/G/イタリア・西ドイツ・フランス合作
原題または英題:Il gatto a nove code
配給:キングレコード、Cinemago
劇場公開日:1972年10月14日(『映画.com』より引用)
現在のところ『歓びの毒牙』は配信がなく、こちらはU-NEXTで見られるようでした。前作の方が作品としては価値が高いはずなので少し不思議です。
アルジェント本人もやはり今作をあまり気に入っていないということです。
それはなぜかというと(今回ダリオ・アルジェント自伝を買いました、3400円+税)、
「前作と違ったものにしたいと気負いすぎた」「フランスのノワールを理想としていたのにアメリカの推理ものになってしまった」という若い監督らしい失敗(とも言えないと思いますが)だったようです。
確かに前作の切れ味と比べると、盲目の老人、子ども、お調子者の記者…と登場人物もエッジが効いているとは言いにくいです。しかしその中でも印象的な場面はたくさんありました。
アルノの姪が、小さいにも関わらず異常に賢く、アルノの助手として大きな働きをしたこと。
カトリーヌ・スパーク演じるアンナの美しさ、あと、衣装の斬新さ。
(ラブシーンで両肩からバリッと前面がはがれて一気にトップレスとなるドレスにはびっくりして笑ってしまいました。その後手で胸を隠す仕草をしたりして、一体出したいのか出したくないのか…。)
殺人シーンでは絞殺に細いヒモが使われ、首に深く食い込んでただならぬこだわりを感じますし、犯人目線のカメラワークもゾワゾワします。
ラストの犯人転落では、手からの摩擦熱の煙で生への執着が表現され、そのままENDというバッサリ感はとても良かったです。
なんでも、最後に、助かったジョルダーニがアンヌに看病されるシーンを入れそうになっていたとかで、なくて本当に良かったです。
そんなのが入っていたら本当に興ざめです。なくて良かった!
そして、欲を言えば最後に犯人の転落したエレベーターが動いたら良かったかもしれません。
私だったら動かして犯人を圧縮してしまうかな、と妄想。(そんな映画もどこかにあったような気がします。)
ちょっと生ぬるい感じもしましたが、あっさり終わって逆にカッコいいのかもしれません。
その犯人ですが、染色体異常が犯罪者に多いという設定の元、自分の染色体異常を知られないようにすり替え、バレそうになると殺してしまうという人物であり、自ら実証してしまったことになります。
精神障害者、染色体異常者を殺人鬼として描き、現代では差別的で作れない内容です。時代を感じると共に貴重な作品だなと思いました。
前作のゲイ美術商に続いて、今回もゲイクラブ、男性の奪い合いなどが表現され、なぜか「よっしゃ!」と思ってしまった私です。
ダリオ・アルジェント本当に好き…。