『アット・ザ・ベンチ』映画感想文・キャストの満足感がすごい

古びた一台のベンチをめぐる、5つのエピソードです。

一本の映画でこれだけの方々の演技を見られるなんて贅沢です。

あらすじ

川沿いの芝生にぽつんとたたずむ小さなベンチ。ある日の夕方、そのベンチには久々に再会した幼なじみの男女が座り、もどかしくも愛おしくて優しい言葉を交わす。その後もこの場所には、別れ話をするカップルとそこに割り込むおじさん、家出をしてホームレスになった姉と彼女を捜しに来た妹、ベンチの撤去を計画する役所の職員たちなど、さまざまな人たちがやって来る。

2024年製作/86分/G/日本
配給:SPOON
劇場公開日:2024年11月15日

感想(ネタバレ含む)

Ep.1 / Ep.5

広瀬すずと仲野太賀が、幼馴染から恋人同士に移るか移らないかという微妙な関係にあり、互いの心を探り合うかのような微笑ましい会話を繰り広げます。

Ep.1から時が流れてEp.5では座る距離も縮まり、結婚することが決まったらしい二人。川岸には一面に草が生えていて、時の流れを感じました。

大きな出来事はありませんが、二人の自然であたたかい会話がとても心地よい作品でした。

Ep.2

岸井ゆきのと岡山天音のカップルが別れ話をしているところへ、荒川良々が現れて絡んでくるという話。

面倒くさい彼女を演じる岸井ゆきのがとても上手くて、やはりすごい俳優さんだと思いました。

『ケイコ、目を澄ませて』は耳の聞こえない役で台詞がなかったけれど、今作では早口で恋人への不満をまくしたてる役で真逆のキャラクター。演技の違いを楽しませていただきました。

岡山天音さん、そして途中から乱入してくる荒川良々さんも素晴らしくて、上質なコント作品を見ているかのようでした。

面白さということでは五作品の中で一番でした。

Ep.3

今田美桜と森七菜の姉妹が、大喧嘩を繰り広げる話。

この二人なら怒鳴っていても可愛い…のですが、これはエネルギーを使うお芝居で大変だったと思います。

なにしろほぼずっと叫びっぱなしで、ホームレスになってベンチに居座る姉に対して「帰れ」「帰らない」の押し問答。

理由をひっぱるので少ししんどくなりそうでしたが、姉(今田美桜)が、忘れられない男性を想うあまりの行動と分かり、それでもまあ、帰った方がいいよね…とは思いました。

こうして迎えに来てくれるきょうだいがいるって幸せなことだと、最後は気づいたのかな? そんなラストでした。

Ep.4

草彅剛、吉岡里帆、神木隆之介、あと古舘佑太郎くんが出ていました! 監督(神木隆之介)の横でメガホンを持っていたのが彼です。

この方、古舘伊知郎さんの息子さんなのですが、音楽、俳優、文才もあるし写真も上手いし、顔も可愛らしくてしかも慶応という方なんだけど、なんとなくいつも慌てているような、駄目っぽい雰囲気が漂っていて、見ていてすごく面白くて好きなんです。

もっと売れるといいな〜と思っています。もっと名前大きく載せてあげてください、とXに書いておこう。

お話の方は、ここでちょっと変化球というか劇中劇の体となり、宇宙人の父親という役でベンチが喋ります。

これが…うーん…どうだったかというと少し凝りすぎかなという気がしました。

ベンチに話させるのはちょっと野暮な気がしたし、台詞も浅い気がして、このパートがいまひとつでした。

あと、Ep.2の岸井ゆきのさんと、めんどくさい人かぶりしてしまった草彅くんが、ちょっと損だったかもしれません。

まとめ

こういう作品は好きなエピソードがどうしても決まってしまうので申し訳ない気もするのですが、私としてはEp.1と2と5が大変面白かったです。3は少し身につまされて、4は凝りすぎかな。でも全部良かったです。

配信になったらまた見てみようと思います。