清水尋也、高杉真宙、伊藤万理華という若手3人に、岩屋拓郎監督は長編初監督という、フレッシュな作品でした。
雰囲気たっぷり、いいね…
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幼なじみで青春時代をともに過ごした富井ヒロトと金森は、ある事件をきっかけに別々の人生を歩むことに。数年後、暴力団・菅原組の構成員となった富井は組長に認められて組織で頭角を現し、いつしかそこが彼の居場所となっていた。一方、金森は荒くれ者たちが集まる犯罪組織でケンカや裏家業に明け暮れており、菅原組もうかつに手を出せないほどの異名をとどろかせていた。かつて親友だった富井と金森は、一触即発の敵対関係となってしまう。
2024年製作/93分/R15+/日本
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
劇場公開日:2024年11月15日
闇社会を描きながらも、彼らの青春時代への郷愁がバックにあり、切なさのあるノワール作品でした。
冒頭の清水尋也を背後から撮った長回しのシーンがとてもカッコよくて、彼の真っ当ではない境遇が一目で感じ取れ、期待度も高まります。
若さゆえの苦しみと暴走。理屈では語れない衝動性がよく表現されていて、もしや監督さんお若いのかな?と思って調べてみると、32歳とのこと。なるほど! 若くないと作れない作品ってありますよね。素晴らしいです。
彼らが青春時代を古い家で懐かしむところは、翌日の修羅場を控えた最後の晩餐的な雰囲気があり、とても切なく、心温まる場面でした。ヒロトと紅化のコインランドリーでのぎこちない会話も良くて、抗争との緩急が良かったです。
彼らは逃亡するわけですが、地獄の底まで追いかけられて、殺されてしまうのか、警察に捕まってしまうのか。
いずれにせよこのままではいられない3人です。それだけに一緒にいる世界は、短いながらもオアシスであったのかなと感じました。
3人の運命が重なる時はいつも安らぎと残酷な運命がつきまとうという、因縁のような関係。若いながらにさまざまなものを背負いすぎてしまった彼らの未来は、明るいものではなさそうで、切ない物語でした。
若者たちが子どもの年齢に近いので、つい親目線で「オバサンがなんとかしてあげたい…」と思わずにはいられませんでした。
抗争一辺倒ではなく、青春物語を含んでいたところが、私にとっては非常に見やすかったし、感情移入しやすかったです。
そういえば、紅花はどこかの時点で、いやもしかすると始めから、記憶喪失ではなかったのかもしれない、と想像しました。
復讐のためだとか、知ってて黙っていた、ということを女の子ならやる可能性もありますね。深読みしてそう考えると面白いです。
武器に関して、包丁などが出てきましたが、これはちょっと古風なのか…上層部は少しの昭和のような泥臭さがあり、主人公たちはシュッとしてスタイリッシュであり、青春物語の形。新旧入り交じる不思議な感覚。
粗さも感じましたが、それを補って余りある勢いがあって、私はとても好きです。
岩屋監督の次回作が楽しみです。お名前を覚えておいて次回作も必ず見ますので、頑張っていただきたいと思います。