1994年のオーストラリア作品で、30年の時を経て日本で初公開されました。
かなりの衝撃作。皮肉に満ちていて、残酷であり、一方で愛情にあふれ、心温まる場面もあり、不思議な作品です。
冒頭の虐待の様子から苦しい場面が多く、なんとか心の晴れる展開になればと期待していましたが、幸い、鑑賞後は救われた気持ちになりました。
フェイバリットにはならないものの、考えさせられることが多く、観てよかった作品です。
あらすじ
バビーは母親と二人暮らしであり、35年間、母親の警告を信じ、暗く汚い部屋に閉じ込められてきた。しかし、父親と名乗る男が現れ、その生活は終わりを告げる。
彼は新たな経験と刺激に満ちた外の世界に飛び出すが、待ち受ける世界は過酷かつ温かかった。人、言葉、音楽…初めての体験に右往左往するバビー。
彼は過去の呪縛から解放されて、新しい人生を送ることができるだろうか。
ネタバレあり感想
この映画は、母親から虐待を受けるバビーの壮絶な物語からスタートします。彼は母親から厳しい制約を課され、その過酷な状況に心が痛みます。
バビーは母親の独自の価値観の下で育ち、他の人々との接触が一切ありません。善悪が分からず、お金も知らない、死というものもわからない、無知の悲しさ…親の罪深さを浮き彫りにします。
特に、死の理解が不足しているために猫を傷つける場面は辛いものでした。
外の世界に出てからのバビーは他人の言葉や行動のマネしかできません。その結果、適切な状況での行動が難しく、場をわきまえず不適切な言葉を口にすることもあります。
皮肉にも、彼の暴言がパンクロックにはまり、音楽の世界で評価されるところは面白かったです。これは彼に大きな自信を与えたはずです。
物語の中盤では、バビーは「パパ」になりたいと強く願うようになりました。これは、人の親という意味ではなく、父性に象徴される「道徳、規範、倫理を兼ね備えた大人」という成熟への道を求め始めたのだと私はとらえました。
ラストに向かうにつれ、彼は愛を知り、他人の気持ちを理解し、人間の心を学んでいきます。この部分はやや駆け足でしたが感動的でした。
エンジェルというパートナーを迎えて幸せをつかむエンディングには、心からホッとしました。ただ前半部分が過酷すぎたため、中和するためには、もう少し心安らぐ場面が欲しかった気もします。
この映画は、観る人を選ぶかもしれませんが、私は非常に衝撃を受け、すごい映画だと思いました。がんばれる方には、挑戦してみることをお勧めします。