『花様年華』映画感想文・プラトニックか否かは…言うと野暮ですか?

午前十時の映画祭で鑑賞。ウォン・カーウァイは見ていないものもありますが、一番良かったです。

全てが美しい…パーフェクト!

夫婦交換すれば?なんて下衆なこと言っちゃダメ

あらすじ

1962年、香港。新聞編集者の男性チャウと商社で秘書として働く女性チャンは、同じ日に同じアパートに引っ越してきて隣人になる。やがて2人は互いのパートナーが不倫関係にあることに気づき、時間を共有するように。戸惑いながらも、強く惹かれ合っていくチャウとチャンだったが……。(『映画.com』より引用)

2000年製作/98分/G/香港
原題または英題:花様年華 In the Mood for Love
配給:アンプラグド
劇場公開日:2018年2月24日

感想(ネタバレ含む)

最近見た過去作品の中では『さらばわが愛 覇王別姫』以来、打ちのめされました。

実はそれほど期待していなくて、「不倫ものでしょ…」「ウォン・カーウァイはあまり好きじゃない作品もあるし…」と、少し及び腰だったのです。

『ブエノスアイレス』はまあまあ良かったけれど、『恋する惑星』が私にはちょっと合わなくて気に入る自信がありませんでした。

ところが今作はとても心に刺さって、家に帰ってから配信でもう一回見てしまいました。

マギー・チャンのチャイナドレス姿、トニー・レオンの苦悩する表情、タバコの煙に至るまで、どうしてこんなに綺麗なのかとめまいがしそうでした。

互いの配偶者同士が不倫をしている、けれどその二人の姿はスクリーンに映りません。

そのため雑念を挟まず、チャウとチャンに集中して見ることができます。

彼らが時間を共有するうちに、互いへの気持ちが深まり、愛情へと変化していく様子がとても切なかったです。

どちらが誘ったのか、どうやって夫を問い詰めるのか、練習をする二人が、最後には自分たちの別れを芝居してみて、チャンが涙します。

強く惹かれ合っていたことに、あらためて気づいてしまったのです。苦しい…。

その後、すれ違い結ばれなかった二人ですが、4年後でしょうか、元々隣同士に住んでいた住まいをチャン、チャウの順に訪れます。

後から来たチャウが窓からこちらを見ている表情は、何かを発見したように見えます。

彼は知らないと思いますが、こちら側には、チャンとその子どもが住んでいます。夫は別れたのか亡くなったのか、とにかくいないようです。

チャウはそこで彼女の息子を見たのではないでしょうか。その子どもは3歳くらい。別れた翌年にシンガポールを訪れた時にはもう生まれていたのかもしれません。その時、指輪を外し、タバコも吸っていますから。

プラトニックだと思っていましたが、もしかするとチャウの子どもの可能性もあります。それで夫から離縁され、迷いながらチャウのところへ来たのかも…(妄想)。

アンコール・ワットでチャウが誰にも言えないこととして壁の穴に囁いていたのはそのことかも…(妄想)。

彼もまた妻と別れたのかひとりのようで、もしここで再会すればお互いにフリーなのだから…とつい考えてしまいます。ちなみに二人とも左手に指輪をしていません(前はしていたのに)。

しかし、もう機を失ってしまった二人なのです。

運のようなものが決定的に足りなかった、そんなことが人生には何度かあるんですよね。

お互いにもう今さら会うことはできないと思っている、このどうしようもなさが大人っぽくてたまりません。

おそらくウォン・カーウァイの最高傑作だと思います。